第43話

〈草陰ダンジョン〉にて現れたのは草陰小春さんだった。

どうやら自宅がダンジョンになったらしく、彼女はこのダンジョン内部で三日間は彷徨っていたらしい。

取り合えず俺はクインシーを呼び出して〈楽園の箱庭〉の入り口を作って貰う。


「……女性を入れたくはないのですが……」


キツい視線を草陰さんに向けると、小動物の様に彼女は縮こまった。

ビクりと体を震わせて涙を浮かべている。やめてあげなよクインシー。

あまりにも無害過ぎる彼女にクインシーは息を吐くと仕方なく〈楽園の箱庭〉へと通してくれた。

この内部が〈剣の王〉の感知を逃れる事を願うばかりだ。


そうして、〈楽園の箱庭〉でスマホの内部にあるアイテム処分を始める。

〈雷鳴剣〉は勿体ないが命には代えられない。まず最初にそれを処分していく。

その間、焚火の前でぽーっとしていた彼女は勝手に話をしだした。


「たすけ……呼ぼうと思って……掲示板……書きました」


掲示板……あぁ、玄武さんが使うチャットみたいな奴か。


「家、ダンジョンになったけど、質問ある?って」


「……おい、見た事あるぞそれ、あのクソスレ建てたのお前かよ」


どうやら、玄武さんは彼女のチャットルームを見た事があるらしい。


「内容がハチャメチャ過ぎて嘘かと思ったわ、実際に行こうと思ってもはぐらかすしよ」


「えと……SNSに、住所、書くのダメ……だから」


「こんなご時世にそんな事気にするんじゃねぇよ……」


そう溜息を吐く玄武さん。

余程、そのチャットの内容がくだらないものだったのだろうか。


「中身、何を書いてあるのか気になりますね」


「あー……見ない方が良いぞ。内容が釣りっぽかったから罵詈雑言の嵐だったし」


「写真上げて……身バレするかも………だから挙げなかった」


「助けてほしかったのなら挙げとけよ。モラルよりも自分の命大切にしろや」


まあ確かに、ダンジョンの中に居るモンスターがあんなに小さくて弱い存在で良かった。

もしもアレがアルターと同じダンジョンのモンスターだったら、彼女は一日も経たずに死んでいたかもしれない。


「まあ、自宅がダンジョンに代わったのは同情するわ。けど、何時までもダンジョンの中に居るのも危ないだろ?」


それもそうだ。

如何に雑魚モンスターが居たとしても危険には変わりない。

出来るだけダンジョンから出ていくのを推奨する。


「えと……そう、ですけど……あの、お二人は……お強い、ですので……」


……なんだ?急にそんな褒める様な事を言って。


「あの……止めて欲しい、です……お爺ちゃんを」


……お爺ちゃん?いったい、何の話をしているんだ?

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