第15話
「え、なんでっ」
ダンジョンが進化した事に狼狽する。
当たり前だ、誰だって野原だと思っていた場所が地雷原だと知ったら慌てふためくに決まっているッ。
俺は踵を返す、近くに居るクインシーは後ろから俺に近づいてきた。
「どうかされましたか?」
「ダンジョンが進化したんだッ!Sランクッ、聞いて無い、そんなのはッ!」
俺は出口まで行こうとした。
だが、俺が来た道は塞がれていた。
ダンジョンが進化した影響か?出口が消えたと言う事は、俺たちが閉じ込められたと言う事になる。
「ご安心を旦那様、このクインシーが付いていますの―――」
そこで、クインシーの声が遮られた。
俺とクインシーの間に、肉の様に蠢く壁が地面から噴出したのだ。
「クインシー!」
ヴヴヴ、とチェーンソーの鳴り響く音がする。
壁を貫くチェーンソー。あぁ、良かった。彼女ならこの壁を壊す事が出来る。
そう思ったのも束の間、俺の足場が唐突に消えた。
「あ、え?」
自由落下。
俺の体はそのまま遥か下に落ちていく。
先程まで立っていた場所は、闇に染まってみる事が出来なくなった。
そして、数秒の落下の末、俺は地面に衝突した。
硬い地面だ。衝撃で俺は呼吸が出来なくなる。
右肩から落ちた為に、俺の体は猛烈な痛みを発していた。
「はッが!はっ、い、痛いッ」
俺は肩を抑えた。頭の部分からぬくもりが感じ取れる。
頭をぶつけて、皮が破れてしまったみたいだ。
どうしよう、そう考えて、俺はスマホを取り出した。
あぁ、良かった。スマホは無事だった。震える指で操作を行い、俺は〈回復薬・中器〉を使用。
透明感のある青色の液体が出てくると、俺はそれを一気に飲み干す。
喉を鳴らして無理矢理喉に流し込むと、数十秒も経たない内に体にすぅ、とハッカの様なひんやりとした感覚が伝わり、体の負傷を治してくれた。
「は、はっ……は、ぁ……すぅ、はぁ……」
息を整える。薬は効いてきて、体の負傷を治してくれたらしい。
一命を取り留めた、あるいは、九死に一生を得た、そう言えるだろうか。
いや、違う、これは所謂、延命措置に他ならない。
「あ……あぁ……」
なんて迂闊だったんだ。
こんな、こんな簡単に、クインシーとはぐれてしまった。
Sランクダンジョンに一人。
これから先、どんな困難があるか、考えるだけでも絶望的だ。
このまま、待てば……クインシーが俺を見つけに来てくれるだろうか?
そう考えて、首を横に振る。
此処はダンジョンだ。必然的にモンスターが出てくる。
このままじっとしていたら、モンスターと鉢合わせした時点で積みだ。
ならば周囲を確認して、ある程度の逃げ道を探しておいた方が得策だ。
例えモンスターと出会ったとして、知らぬ道を逃げるよりも、知っていた道を逃げた方が生存する確率が高いのは明白だから。
「………いや、待てよ」
俺はスマホを動かす。
そうだ、俺にはまだアレがある。
これが起死回生の一手になるのかも知れない。
〈虹色確定ガチャチケット〉。
事前登録で手に入れた虹色確定ガチャ。
同時に、俺は上位職業による契約者がある。
少なくとも職業限定になる武装甲で外れを引く可能性は低い。
「行くぞ……」
俺は〈虹色確定ガチャチケット〉を消費する。
一縷の望みを掛けて、ガチャを回すのだった。
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