第16話

画面に現れる見慣れた光景。

何時もの様に虹色の空から隕石が落ちてくる。

その隕石が地面に衝突する寸前、ポタリ、と、画面に赤い血が垂れだした。

これも演出か、と思ったが、あまりにも立体的過ぎるその血は、明らかに外部からの滴りだった。

恐る恐る、俺は上の方を向く。

上は薄暗いが、明らかに空間に亀裂が走っているのが見えた。

あぁ、その光景は何処か似ていた。虹色召喚獣確定ガチャチケットを使用した際に、チェーンソーで空間を割って出てきたクインシーの時とまったく同じ。

俺はその場から離れる。粘っこい血液が地面へと零れて、卵を割るかの様に空間の欠片が周囲に散らばり、そして血と共に何かが生まれ出た。


「ふぁ~ぁ……良く寝た~……ん~?」


小学生くらいの少女だ。濃いめの金髪をツインテールに纏めて、黒い服はダルダルの萌え袖、少しでも揺れれば簡単に下着が見えてしまいそうなスカートと黒のニーハイソックス。口を開けて欠伸をすれば、その白い歯は尖っていた。八重歯、ではない、なんだか全ての歯が鋭利な刃物の様に鋭かった。


そして彼女は浮遊をしながらこちらへと近づいてくる。浮いている?いや、飛んでいるのか?彼女の腰元からは、うっすらとではあるが、蝙蝠の様な羽が生えていた。


「ね~え~、キミってさぁ~、血液型はなに~?」


間の抜けた声だった。

その問答に俺は首を傾げたが、一応は正直に答える事にした。


「えっと……O型、だけど」


O型、それを聞いて目を開き両手を挙げる彼女。


「やった~ネルの好きな血液型~!」


わぁわぁと万歳をして声を荒げている。

好きな血液型?えぇと、それはもしかして。

俺はスマホに付着した血液を拭う。そしてスマホの画面には、やはり彼女の情報が記載されていた。


『〈吸血淫魔〉イアネル』

『レアリティ・虹色』

『契約条件

血液型に答える事。審議に失敗した場合は契約失敗となる』


と、書かれていた。

……なんだろう、虹色の召喚獣って、契約条件を満たさないと使えないのかな?

と言うか、吸血「淫魔」って……。


「ネルねぇ~O型の血が一番好きなんだ~」


「え、あ、そうなんだ」


浮遊した状態で俺に近づいてその手を俺の首に回す。

そしてお近づきの印なのか、柔らかなほっぺが俺の頬にくっつけて頬ずりをしていた。


「だってぇ~ドロっとしてて~ネバネバしてて~喉に絡まる感覚がしてぇ~ネルはそれが一番好きなんだぁ~」


血液の味を思い出しているのか。イアネルは舌なめずりをして俺の横顔を見ている。


「キミはどんな味がするのかなぁ~?」


「え?あがッ」


不意の一瞬を突かれて、俺の首にイアネルの牙が建てられた。

一瞬の痛みと共に、血を抜かれる感覚が全身を駆け巡るのだった。


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