第67話
「クインシー、イアネル、サチ、キミたちは、他の世界の人間らしいけど……」
楽園の中で俺は彼女たちにそう聞く。
昔の、ガチャに導入される前の記憶があるのかどうか。
「ん~……なんか暗くてぇ~、凄い気分が悪い世界ってのは覚えてるけどぉ……前の世界よりもこっちの世界が好きだなぁ」
と、イアネルは言う。
そりゃ、イアネルの出身地は魔界だし、そう思うのも仕方が無いだろう。
それよりも、クインシー。キミの方はどうだろうか。
「……私の世界は、なんといいますか。血生臭い世界でしたよ。日々、悪人が大量発生していて、それを狩るのが、私たちの仕事でしたし……裕福な暮らしでしたが、希望はありませんでしたね」
クインシーは遠い眼をしながらそう言った。
彼女は過去の記憶でも思い浮かべているのだろうか。
故郷を寂しいと、そう思っているのかも知れない。
「……そういえば、私の記憶の中では、ある事が思い浮かびます。髭を結んだ、老人の顔です。それが、私が居た世界の最後の記憶ですが……今思えば、それが、前神……カルサ・エルゴ神だったのかも知れません」
彼女は、あの神様と出会った記憶があるのだと言う。
カルサ・エルゴ神、シュテイルが言うには最低な神と罵っていた。
「何か、話した様な記憶もありますが……思い出せないですね。申し訳ありません、旦那様」
そうクインシーは俺に向けて謝る。
まあ仕方が無い事だ。こればっかりは。そもそも、彼女たちは被害者なのだ。謝る必要なんてない。
「……サチ、は、覚えて無いだろうから、仕方が無いけど……二人は、元の世界に帰りたいかい?」
そう聞いた。
俺は、この世界を元の世界に治そうと思っている。
けれど、彼女たちの世界も、神によって奪われてしまったのなら、それを直してあげたいと思っていた。
「べっつにぃ~、あそこに居てもつまんないし、今の方が好きだし、だーりんもすきっ!」
「……コレと意見が同意するのはアレですが……私も、どちらかと言えば、もうあの世界に戻りたいとは思いません」
二人はそう告げる。
それを聞いて、俺はそうか、と一応は頷いてみせた。
「……遊飛よぉ、一応だけど。他の世界の事はあんま考えんなよ。酷かも知れねぇが、それをしたのはあくまでも髭の神だ。尻ぬぐいする必要はねぇし……俺たちは俺たちの世界をどうにかするのが先決だろ」
と、玄武さんは言う。
そう、だね。まずは、俺たちの世界をどうにかする事から始めようか。
一応の結論を決定して、俺たちは〈楽園の箱庭〉で休む事にした。
次に起きたら、ダンジョンに行って……それで充電でもしよう。
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