第66話

再び、この西の地へと戻って来た。

けれど、何処か俺に向けられる視線は違っていた。


「どういう事だよ……」


最初に口を開いたのは、玄武さんだった。

多分人間の中じゃ一番付き合いが長いのは玄武さんだ。

俺はばつが悪そうな表情を浮かべる、自分でも、何がどうなっているのか分からないでいた。

そもそも、何故俺が神の末裔なんだろうか。


「なあ、遊飛……お前、神の末裔って……」


「俺も、なんだか分からないですよ……」


「一応、ライブ中継で見てたけどよ……なんだよ神の末裔って……シュテイルとか、あれ、なんだっけ、えっと……ゴッドクイーン、とか……お前、あんな奴らと血が繋がってるのか?」


「……其処は否定したいですよ」


あんな精神が狂った様な奴と一緒にして欲しくはない。


「別段、大した事でもあるまい」


そう切り出したのは草陰さんだった。


「ただ、どうすれば世界は元に戻るのか……その答えに最も近くなった、だけの事だろうに」


「……まあ、そうだな。十日間。遊飛が生きてくれて、後は神にでもなってくれれば……世界は元に戻る、そうなんだろ?」


多分、あのルール、と言う進行役の口ぶりからしてそうなんだろう。

十日間逃げている間に、この世界をどうすべきか、信条……マニフェストを決めろと言っていた。

それはつまり、神が選定された場合、其処からマニフェスト通りの世界を構築する、と言うものなのだろう。


「なら、えと、生きる事、考えないと……十日間、死んだら、駄目」


小春さんがそう言ってくれる。

うん、そうだね。俺が生きていれば、世界が元通りになる可能性がある。


「……取り合えず、此処から離れよう。少しだけ歩いて、安全な場所を見つけたら、クインシー、頼むよ」


俺はクインシーの持つ〈楽園の箱庭〉を使用をお願いする。


「あ、そうだ……一応はみんなのスマホの残量を確認しましょうか、20%切っている様なら、先にダンジョンで充電していきましょう」


そう提案する。

俺と玄武さんは大体60%。

小春さんはほぼ100%で、草陰さんが45%を切っていた。


「45%……取り合えず一休みした後に適当にダンジョンにでも行きましょうか」


「……スマホ、充電しなければならんのは面倒な事よ」


と、草陰さんはヒラヒラとスマホを振りながら言う。

それには俺も同感だった。今更ながら、何故神はスマホと命を連動する様にしたのだろうか。

もしも十日間生き残れたら、何故か聞いてみようか。

そんな事を考えながら移動して、俺たちは〈楽園の箱庭〉へと移動するのだった。

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