第65話

えぇと、なんか、白スーツの男の人が手を挙げて無いのは安心したけど。

それよりも、シュテイル……だっけか、なんで手を挙げて無いのか不思議だ。


「勘違いして欲しいワケじゃない、こういった話は私の一存では決め兼ねない。故に、全ての提案に対して私が手を挙げる事は無い」


と、そうシュテイルは言っている。一存では決められないって……ほかに誰か居るのだろうか?


「では、敷島善吉神候補、何故手を挙げないのか聞いても?」


と、ルールは白スーツの男を見て質問をする。

その言葉に、白スーツ……もとい敷島と呼ばれた男はぼさぼさとした髪の毛を振り回して獅子舞の様に踊り出す。


「あ~た~し~をォ!!そう余分じゃないいィぎぃゃやあああああッ!」


うる。さ、煩いッ、なんだ、この人は!!


「ふぅ……あたしゃ敷島善吉なんて名前じゃないのさ、もうそれは過去の名前、あたしは、ゴッド・エンジェルクイィーン、様ッ!呼ぶんのなら、そう呼びなぁヴィッチがァ!」


え……えっと……おネエ?見た目はなんだか、ヴィジュアル系ファッション、とも見て取れるけど……。


「ひゃーはははッ!あたしが何故手を挙げなかったかってぇ!?そりゃ当たり前でしょうが、この世界の人間は、全てこのあたしの為に用意された玩具だからさっ!他の輩にちょっかい出されて、あたしの玩具を壊されるのが気に入らないだけなんだよォ!」


ベロベロと、とても長い舌を虫の様に蠢かせて、そう叫ぶゴッド・エンジェルクイーン……。


「では……他に代替案があるのですか?」


ルールがそう聞くと、ゴッド・エンジェルクイーンはポケットから眼鏡を取り出して装着すると、眼鏡に手を添えてクールなポーズを決めた。


「そうですねぇ……七十パーセント……でしょうか、ボクから発現出来る言葉は……七パーセント程の信憑性がありますけど……」


何を言ってるんだ、この人は……?

データキャラ?にしては完成度が低すぎる……。


「えー……では、ゴッドエンジェルクイーン神候補、その代替案とは?」


「ボクの名前はパーフェクトマスター・数尾学ですが?」


名前が変わったッ。なんなんだこの人は……。


「……えー……では……代替案、遊飛神候補、何かありますか?」


露骨に避けた……いや、それはいいか。

代替案、当然ながらある。


「これは神の末裔の戦いだ。なら……人は関係ない、やるのなら内輪で決めるべきだ」


「成程……では……試練の内容は〈十日まで生き残る事〉同時に〈神同士の殺し合い〉を許容。これで宜しいですね?賛成の方は挙手を」


そうして、俺は手を挙げる。

その内容に、白スーツの男も手を挙げた。

シュテイルは手を挙げなかったが、多数決は決した。

試練の内容と言うモノが選定されたらしい。


「開催日はこの地から元の地球へと戻った時、そして十日後に再びこの地へと戻ります。その際に、生き残った神候補には今後、どの様な世界にするか、信条を考えておいて下さい」


それだけ言って、ルールが本を広げた。


「では、皆様。また十日後……最終試練にて会いましょう」


パタリ、と本が閉じると同時。

俺は、草陰ダンジョン前へと立っていた。


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