第78話
俺は此処に来る前の事を思い浮かべる。
…確か、〈汞の王〉ゼシルとの闘ったんだっけ。
その後は…ゼシルが消滅していくのを見た。戦いに勝利した時も覚えている。
けど…その後、唐突に俺の体は重たくなって、意識が途切れたんだっけか。
そうか、俺はもう死んでいたのか。
「はぁ…どうしようかな」
もう俺は死んでしまった。
と言う事は、もう神の戦いに参加する事は出来ない。
既に俺は死んでしまったのだから、参戦は不可能な状態。
なんだか、神になると息巻いてたのにこんな結果になるなんて、色々と残念でしかないな。
「おら、行くぞ神の末裔」
俺の気分が落ちている様子なんて関係ないと言いたげに覆面男が俺を指差して、手招きした。
「一体、どこに向かうんですか?」
俺はやる事も無いから、覆面男の後姿を追い出す。
一体どこへ向かおうとしているのか。
「おら、付いたぞ」
覆面男の後ろを付いて行って、そして到着した先はテーブル席だった。
真っ白な円卓にはお菓子や紅茶の入ったポッドが置かれている。
その円卓には既に他の人間が座っていて、その人の顔は見知ったモノだった。
「あ、覆面の方」
「ふふ、覆面の方、だなんて失礼なモノ言いだね、我が息子」
其処に居たのは、覆面男が被っていた人間の皮。
白髪に顎鬚を蓄えた初老の男性。
それこそが、覆面男が殺して、その顔面を剥ぎ取った男の正体。
カルサ・エルゴ神そのものだった。
カルサ・エルゴ神は優雅に紅茶を継がれたカップを指で挟んで顔に近づいている。
どうやら香りを楽しんでいるらしく、浅い溜息と共にうっとりとした表情を浮かべた。
「気持ち悪ィーんだよ!」
ずかずかと、円卓の上を歩いて、そのまま覆面男はカルサ・エルゴ神の掴んでいる紅茶のカップを蹴った。
カップは動いて、そのまま、温めの紅茶がカルサ・エルゴ神の顔面に引っ掛かる。
「折角のお茶会だと言うのに、なんとも勿体ない真似をするねぇ、テンプス君」
「俺の名前を呼ぶな、また殺すぞクソ爺」
「ふふ、あぁ、済まないね我が息子。取り合えず椅子にでも座って、お茶を楽しむと良い」
諭されたから、俺はそれに従って椅子に座る。
カルサ・エルゴ神はナプキンで顔面を拭いていた。
覆面男は気に入らない様子で、椅子に座る事無く円卓の上に座っている。
「テンプス君。キミは礼儀を知らないね。同時に自己中心的だ。だから神になった後に、すぐに寝首を掻かれてしまったんだよ」
「あ?!知るかボケェ。大体なぁ、俺は神の器じゃねぇんだよ。俺が神になったのも、仕方なくだってのに」
そう話を切り出していた。
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