第56話
「玄武さん……一つ聞きますけど。アレが使えるんですか?」
あれとは、時間操作能力だ。
玄武さんは時間操作を行う時空者と言う職業を持つ。
基本性能はあらゆる時間に対応出来る能力。
第一階位職能は自分を加速させる能力……と聞いている。
流石に、時間停止能力を、玄武さん自身が使える事は無いが……。
「空間に干渉する能力、アレは使えますよね?」
「あれ?……あぁ、アレか。まあ、使えるけど意味ねぇだろ。だって斬られるだろ」
時間干渉系の能力は〈剣の王〉の専用武器で斬られる。
だから時間系能力は事実上防がれたと言っても過言じゃない。
「例え時間を止めた所で決定打はねぇしよ」
そう、〈剣の王〉を倒す程の実力は俺も玄武さんも持ち合わせていない。
可能性があったクインシーは離脱。一応のダメージを与える事の出来た草陰さん次第だが……例え時を止めても、草陰さんはその停止時間の中を動く事は出来ない。
だから、〈剣の王〉を倒すには至らない。
「………あらゆる条件を考えれば、〈剣の王〉に致命的な一撃を与える事も可能ですよ」
「どうやってだ?」
「………俺が合図をします。そうしたら、あのアイテムを使用して下さい」
玄武さんに言って。俺は遠くに居る草陰さんに声を荒げた。
「草陰さんッ!俺が手を叩いたら、その場で思い切り木刀を振って下さい!確実に、相手を両断する様な勢いで、お願いしますッ!」
「空を斬れと?……勝算か?」
「はい、あります。なので、お願いします」
草陰さんは頷く。そして上段に構えて殺意を滾らせる。
〈剣の王〉は、誰から最初に斬ろうか値踏みしていたが、それが好都合だった。
玄武さんが準備を終える、俺は手を構えて、そして、玄武さんと目配せをして走り出す。
『来るかッ!』
瞬間、アルターを俺は出現させた。
「〈
『先に見た、その曲芸はッ!』
バルゼが換装して剣を出現させる。それは時間干渉能力を斬る刀剣。
バルゼは時間が淀む感覚を察知すると同時に時間干渉能力を切り捨てた。
「振ったな?」
俺は剣の王があっさり引っ掛かった事に対して笑みを零す。
剣の王は時間を斬った。それは間違いない。剣の王は時間を斬った事を確信して……そして間違いに気づく。
『違う……この時間はッ』
「俺だ。〈
それは玄武さんの時空者専用武装甲・〈遅滞時計〉だ。
周囲の時間を遅くさせる能力。俺は時空者じゃないから、この能力を使えば俺も停滞対象に入るから中々使う機会は無かった。
手を叩く。それに合わせて草陰さんが木刀を振り翳した。
「――――
そして。俺はアルターの能力を発動する。
停止される時間。既に振り切ったバルゼの剣ではこの空間を破る事は出来ない。
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