第24話

なんだこの能力は。

放たれた雷撃が、アルターに近づいていくに連れて段々と速度を落としていく。

そして、宙に舞うシャボン玉の様にゆるりと動いていた。

これはまさか……空間の時間を停滞させているのか?

けれど、今俺が立っている場所にはその影響下はない。

実際に自分の手足を動かしてみて、体が不自由なく動くさまを確認する。

あの能力、アウタータイムレコード、と言ったか。

その能力はある程度の能力範囲が存在する様子らしい。


「ひゃははっはははっ!!」


「ならッ!玄武さんッ!雷撃を打ってください!!」


俺は〈空間転移・中〉の発動準備をする。

どれ程の時間を停滞させようとも、その地点に移動させてしまえばダメージを与える事が出来る。

それは先程のマネキン人形で実戦済みだ。

俺の言葉の通りに雷撃を放ち続ける。その稲妻の嵐に向けて〈空間転移〉を発動、アルターを嵐の中心に移動させた。


「ぐぅッ!!」


その肉体が機械で出来ている為か、電撃とは相性が悪いらしい。

悶える様な声を漏らして、アルターはそのまま地面に膝を突いた。

これは好機だ。俺は即座に行動する。


「仕留めますッ!攻撃をッ」


叫び、俺は爆弾ゴブリンと中位魔法導師を膝を突くアルターに向ける。


「ひゃはははははっ!はははーっ!!」


笑い声が高らかに、〈霹靂大帝エレクトロ・エゴ雷霆剣クラクション戯演ジョーカー〉が放たれる。

爆弾ゴブリンによる爆弾投擲に加えて、風の切断が一斉にアルターへと向かい出した。

確実に倒せる、とはいかないものの、アルターに極大なダメージを与える事が出来る筈だっ。

そう思った矢先だった。

アルターは顔を挙げて呟く。


「〈そして残るは一つのみロストワン・リザルト〉」


そして―――。俺は吹き飛ばされた。

同時に、近くに居たイアネル、玄武さんも吹き飛んでいる。

最悪な事に、爆弾ゴブリンと中位魔法導師が爆破していた。

それはモンスターを退治した時に起こる爆破と似ていた。

まさか、やられたのか、一瞬で?ありえない。


だが、俺も、イアネルも玄武さんもダメージを負っている。

更に、さっきまで膝を突いていたアルターの姿は無く、まったく別の位置に、アルターが立ち尽くしていた。


「先程の言葉は聞こえたかね?人類よ。聞こえるはずも無い、それほどに、私と君らとでは次元が違うのだ」


次元が、違う……時間を操るモンスターだと思っていた。

だが、まさか、そんな事がありえるのか?


「世界は私の言葉一つで覆る。早くもなるし、遅くもなる。常に環境が変わる最中、ただ一つ、動く事が出来るのは私のみ」


アルター、先ほどの、ロストワン・リザルト。

その能力は、まさか、時を止める事が出来るのか。




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