第87話
俺が死んでいる間は数時間ほどの体感だったけど。
現実世界では既に十日も過ぎているらしい。
「玄武さん、ありがとうございます」
俺はそう言って寝転ぶ玄武さんにお礼の言葉を言った。
「へっ……良いさ。俺はこの十日間で成長したからよ」
そう言って玄武さんは自分の手を見ていた。
一体どんな魔法を使って、俺を生き返らせたのだろうか。
「俺の職業・時空者だ。加速、停滞、停止された時間の移動、なら、鍛えれば逆戻しだった可能じゃねぇかって思ってよ。無我夢中で職業を鍛え続けた」
その結果。
俺のスマホが壊れる前まで時間を戻したのだと言う。
成程、やはり時空者の能力は凄まじい。
「俺ァ疲れた……だから後はお前に任す。世界を元に戻してくれ」
そう玄武さんが言い出す。あぁ、そうか、まだその話をしていなかったっけ。
俺は死んだ時に誰と出会ったのかを話し出した。
そして、今後、この世界をどうするべきかも。
「……マジかよ。じゃあ、アレか?普通になったら回復薬の効果も無かった事になって死ぬのか俺?」
重傷を負った人ならば、回復薬の効果が無かった事になるとそうなるだろう。
「えと……心臓、無くなる、っと、春さん、死ぬ?」
「そうなります。だから俺は、この混沌とした世界を継続させます」
俺の選択に反感する人はいなかった。
これが百人、千人の前だと、また反感する人は存在して、やめろと言う人も居るだろう。
けど少なくとも俺の前にはそんな事を言う人はいない。
だから俺は、その声に左右される事無く信条を掲げる事が出来る。
丁度その時だった。
鉛色の空をする曇天が割けた。真っ二つに割れた先から、白い布を巻いた少女が下りてくる。まるで彼女が登場する為だけに行われた演出みたいだ。
「どうも、遊飛様。お時間となります。これより決戦の場へとお連れしますが……三名のみ、眷属を動向する事を許可します」
と、その少女・ルールが言う。
眷属、と言う事は、俺以外にも三人、人を連れていく事が出来る、と言うワケか。
「召喚獣は眷属に入る?」
「いいえ入りません。お連れできるのは遊飛様を含めて四名だけです」
そう言った。ならば、俺はクインシー・イアネル・サチを収納した。
「この状態で連れていく事は?」
「可能です。さあ、遊飛様、誰を選びますか?」
誰を選ぶ、なんて言われても……。
「は、はいっ、い、行きます」
と、最初に手を挙げたのは小春さんだった。
「最後、顛末、見たい、です」
この世界がどうなるのか、見てみたいらしい。
そうなると、必然的に、彼女を守る草陰さんも動向する事になる。
「はぁ……いや、いの一番に手を上げたかったけどよ、疲れて上がらなかっただけだから」
と、そんな言い訳をして玄武さんも立ち上がった。
これで三名。俺の眷属として動向する事になる。
「宜しい、では、お連れしましょう……神の元へ」
そうして、俺たちはルールの能力によって、あっと言う間に別地点へと到達した。
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