第59話
ダンジョンから出て言った後。
俺はクインシーを呼び戻す。
クインシーは未だに腹部に手を抑えていたから、俺は彼女に回復薬を差し出して飲ませた。
〈剣の王〉との闘いで、彼女に薬を飲ませる余裕すら無かったから。
「………」
「クインシー?ほら、薬、飲んでくれ」
俺はクインシーに薬を差し出すが、クインシーはそれを拒否する。
ハァハァと息を吐いて、苦しそうにするクインシー。
薬を飲めば楽になるはずだろうに、何故か彼女は回復薬を拒んでいる。
「なんでだよ、クインシー。なんで、薬を飲まないんだよ」
俺は不思議で仕方が無かった。
クインシーは、震える手でゆっくりと自らの唇に指先を近づけると。
「……口、移し……を」
……あぁ、クインシー。キミと言う人は。
こんな状況ですら甘えてくるのか。
自分の命を賭してまで甘えてくるのか、少し無謀じゃなかろうか。
「………あぁ、うん、分かったよ」
仕方無く、俺はクインシーの言う通りに、薬を口の中に含んでクインシーに口移しする。
彼女の唇に触れた瞬間、クインシーの柔らかな舌が入って来て、口の中に含まれた薬が一気に彼女の中に流し込まれていく。
「ぷはっ……旦那様、もっと、下さい」
彼女の言葉に応じる様に、俺は再び、クインシーの為に薬を口に含ませて口づけをする。
「ん、ちゅ、……ちゅっ……はっ、はっ」
舌を出して、もっと続けて欲しいとジェスチャーをする。
俺はそんな彼女にただ従う様に何度も何度も回復薬を口移ししていく。
ようやく、最後の口移しをし終わろうとした時。彼女の両手が俺の首に手を回してきて、離れない様にしてくる。
もう回復薬は無い。それでもクインシーは俺を離す事無く、夢中になって俺の口の中に舌をいれて来る。
「あわわ………」
近くに居た小春さんが其処で声を出していた。
多分俺とクインシーがキスをしているところを見るのが初めてだったのだろう。
何度も何度もキスをして、ショートしていた彼女はただ見つめる事しか出来なかったが、長めのキスをしている俺たちを見てようやく我に返ったらしい。
「二人は、付き合ってる……んですか?」
「ある種呪いだと思う、俺は」
玄武さんは俺を可哀そうな目で見つめていた。
「ぷはっ……えっと……クインシー。もう、怪我は大丈夫、なのか?」
そう聞くと、クインシーは頬を赤らめた状態でうっとりとしていた。
「それはもう……旦那様の熱い愛が、クインシーのこの体を癒して下さいました」
いや、キミを直したのは俺じゃなくて回復薬のおかげだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます