第89話

「ルールの内容は単純に行きましょう。選定された三名による殺し合い、最後に生き残った者が次代の神になる」


ルールが極めて簡素な説明をしてくれる。

分かりやすい、だからこそ、気が抜けない。

生き返ってまた死ぬなんて真似はしたくないからね。


「それでは、カウントダウンを始めます。10」


9、と言う言葉が口にされる瞬間。

ゴッド・エンジェルクイーンが腰から拳銃を二挺抜き出して俺とシュテイルに向けた発砲した。

それが開戦の合図だった。

後ろに居た草陰さんが木刀を抜き出して俺に当たる筈だった弾丸を弾く。

シュテイルは回避行動をする事もなく弾丸を受けた。だが、彼の衣服に弾丸が付着している。まったくの無傷であるらしい。


「ひゅぅ!このジョー・ガンマン様の弾を良く受け止めたァ!」


「この気狂いがッ」


ダンッ!と草陰さんがゴッドの方へと木刀を振りかざす。

その一瞬、既にゴッドは行動を終えていた。草陰さんの元に投げられるのは丸い瓶の様なもの。

それは手榴弾だった、ゴッドが舌を伸ばして小馬鹿にした様子でピンをちらつかせている。

そのままバック走で離れるゴッド。爆破する手榴弾。その音と共に草陰さんが木刀を薙ぐ。

爆破の威力、爆風を両断したのだ。


「ひゅぅぅやるぅ!!」


ゴッドは下手な口笛を吹いてお道化る。しかし彼の背後には既にシュテイルの眷属が動いていた。

黒とピンクのソフトモヒカンをした黒タンクトップの男がゴッドの後ろに蹴りを浴びせる。

それだけじゃない。機械の様な複雑な部品を合わせた甲冑を着込む機械甲冑の男が大きな大槌を俺に向けて振り翳す。


「来いッ!クインシー!」


叫び、俺の前にクインシーが出現する。

甲冑の男が握り締める大きな槌をチェーンソーで粉微塵にするクインシー。


「旦那様になんてものを向けるのですか、死になさい」


冷酷な言葉と共にチェーンソーを機械甲冑に振り下ろすが。


「シュテイルッ!」


機械甲冑が叫ぶと同時に出現するシュテイル。そのチェーンソーを素手で受け止める。


「ッ!!切れないッ」


火花が散る。シュテイルは顔色一つ変える事なくその攻撃を受け切る。

背後から小春さんの声が響き出した。


「あのッ!その人、それ、その服ッ、〈白の黒衣ホロウ・ダスト〉ッ!あらゆる攻撃、能力を、着衣する対象者から守る、能力がありますっ!」


そう叫んだ。

シュテイルが着込んでいる服……あれか、攻撃や能力から装備している人間を守る能力。あのクインシーのチェーンソーですら、攻撃が効かないのかッ。


「ッ!……ッくッ!!」


チェーンソーが回転する、今にでも壊れそうな程に加速して、威力が倍増していく。

シュテイルもそのチェーンソーの異変に気が付いたのだろう。

チェーンソーを弾いて機械甲冑を連れて後退する。


「……白の黒衣が切れた……久しぶりに血を流したな」


シュテイルは掌を見てそう言った。チェーンソーで攻撃した筈なのに、紙の端で指を切った程度の切り傷しか出来ていない。

けれど、クインシーのチェーンソーはシュテイルを貫通出来る。これだけ分かれば上出来だ。


「アマテラム。シュテイル。予定を変更する。総力戦で行くぞ」


機械甲冑が叫んだ。シュテイルの後ろに居る赤髪黒スーツの男が頷いてパソコンを取り出す。


「シュテイル、回復魔法を使う。お前に傷は似合わないからな」


「すまない。ヤタロウ」


そう赤髪の男に感謝の言葉を伝えた。掌に出来た傷は癒えていく。


「集え我が至宝。敵を討ち滅ぼせ―――〈亡き国に捧ぐ軍靴ソウルハーツ・クランロスト〉」


その言葉で、大地が震撼した。



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