第80話

「ダンジョンってのは表向きでね。実際はバベル、と形容するのが正しいだろう」


バベル?……えぇと、それは確か、人が神の場所へ届かせる為に作った、塔?だったっけ。


「バベルはね、本来、人と神が繋がる為の道なんだよ。神は人に干渉出来ず、神は人の世界に立ち入る事は出来ない。しかし、数多くの例外の中の一つとして、神が人間の地へ降りる事が出来るルールこそが、バベル、もといダンジョンなんだよ。我が息子は、ダンジョンが成長する瞬間を立ち合ったんじゃないのかい?」


ダンジョンが成長する所……あった、確か、デパートダンジョンへと入った時、何故か〈刻獄の間〉に変貌していたんだっけ。


「ダンジョンは内部は人間で言う腹の中。人を入れる事で消化液と言う名のモンスターが人を殺し、ダンジョンの糧となる。そうして成長し、Sランクを超えたEXランクに到達する事でバベルの塔に進化する。テンプス君はね、人の地に降りて、ガチャを引く為に、神様なんて演技をしていたんだよ」


じゃあ本心でファンタジー世界を作ろうとしていたワケじゃないんだ。


「このクソ神はよー、俺に嫌がらせする為にこんな手の込んだ真似をしやがったんだ。効率は悪いが、人間の地に降りて、ガチャを引いた奴を片っ端からぶっ殺しゃ、俺の手数になるからな」


「もしも召喚獣がキミの世界の人間だったら?基本的に人間に従属する様に設定してるから、キミはそれでも殺すのかな?」


カルサ・エルゴ神はニコニコとして言う、趣味の悪い人だ。


「当たり前だ、人間に操られた同族を見るくらいならよォー、ぶっ殺して解放してやる方が良いに決まってんだろー?」


「ふふふ……しかし残念、武装甲・アビリティ・召喚獣、ガチャから排出されたモノは破壊されれば再びガチャボックスへと戻る仕組みになっているんだよ。だからキミが殺しても、また人の為の道具にしかならない」


「このクソ神がァー!!」


叫び殴りかかるが、カルサ・エルゴ神には当たらない。

だから、近くに置かれたお菓子を鷲掴みにしてそれを投げつける。

お菓子には当たり判定がある様子で、お菓子をぶつけられるカルサ・エルゴ神はクリームだらけになっていた。


「はぁー……はぁー……」


「ふふ、さて……お遊びはこれまでにして、我が息子よ。これからの話をしようか」


これからの話?それは、次の神を決める話、なのか?


「したところで、どうするんですか?……俺はもう、死んでいるのに」


そう、俺は死んだ。

だからこうして、死んだ人たちと話しているんだ。


「確かに、キミは死んだ、けど、生き返る可能性がある」


……え、それ、どういう意味?

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