第61話

「どういう、事だよ……これ、つまり……あれか?神が倒されたって事は……もう、このファンタジー世界は、終わりって事か?」


玄武さんは嬉しそうな、あるいは困惑した表情でそう言う。

そう、この世界はあの覆面男が作り上げた世界に他ならない。

その覆面男が死んだ以上、新しい世界を築く権利はこの黒い霧の男に与えられる。

だが、何故だろうか、その見た目からして、この黒い霧の男がこの世界よりもより良い世界を築いてくれる様には見えない。


「エー……ソシテ、皆様には残念ナお知らせデス……ハイ、本日、と言うか今、私は神の座カラ降ります、ハイ、すいませんね、此処泣くトコロですので」


……は?なんだって。

神の座から降りる?それって……どういう、意味だ。


「……ア、丁度良いデスネ……新しい神サマが、挑戦しに来ましたヨ……ソレデハ皆様、盛大な拍手でご迎えクダサイな……我らが神……シュテイル様でス」


そして、其処から現れたのは黄金だった。

黄金の髪を腰元まで伸ばした、金色の隻眼を持つ包帯の男。

その男を、黒い霧の男は、シュテイル、と呼んでいた、外国の人なのだろうか、確かにその容貌は西洋風だ。


「ご苦労、マータッド、良く休んでおけ」


「アリガタキお言葉、痺れますネェ……デハ、皆様、このお方が、次代の神ニなるお方デスのデ」


そして、黒い霧の男が四散する。

残されたのは、黄金の男、シュテイル、それのみだった。


「………何故、この世界が混沌になったのか、先にそれを知りたいモノが居るだろう」


そう語り出すシュテイル。

それはまるで演説の様だった。


「……それは、あの覆面男によるモノだが……それは違う。本当は……覆面男が神になる前の……前任の神が齎した事だ」


前任の神……頭がこんがらってきた。

つまりは、覆面男が神になる前に神の座についていた神様が引き起こした事……と言う意味、なのか?


「そもそも、ガチャとは一体何なのか?それから教えよう。このガチャは〈神の遺産〉と呼ばれている。神が死んだ時に発生する遺言にて、〈愛すべき人類に全ての遺産を分配〉する事になっていた。その分配方法が〈ガチャ〉と言う事になる」


……確か、誰かが〈神の遺産ガチャ〉と言っていた……。

それは、文字通り、神様の遺産を俺たちに分けた、と言う事なのか?


「キミたちは、異世界を信じるだろうか?この世界ではないもう一つの世界……この世界とは違った文明・法則・異能が働いている世界、それが無数に存在している」


異世界……漫画や、小説だけの話だと思っていた。

しかし、こんなファンタジー世界に代わったから、異世界が存在する、と言われても簡単に信じられる。


「我々の神は、正直に言えば最低な神だ。何度も異次元移動を繰り返し、異世界を滅ぼし、封印して、自らの私欲として肥やしていた。神の遺産ガチャとは……異世界にて滅ぼされたモノの残滓なのだ」


……それは、つまり。

俺のアビリティや、職業……そして、クインシーたちも……滅ぼされた異世界の、生き残り、なのか?




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