第63話

「………そうか、神の末裔とは顔を合わせたが……君とは初めてだ。名前は何と言う?」


俺……俺に対して言っているのか?この神は。


「……遊飛幸玖」


俺はか細く、小さくそう答えた。

それを聞いたシュテイルは頷くと。


「俺は、先ほど放送したが……シュテイル・マッカンバールだ。同じ神の末裔、と言う事になる」


ちょ、ちょっと、待って欲しい。


「神の末裔って……なんで俺が、そんなのになってるんですか?」


そう、シュテイルに聞く。彼は片目に巻かれた包帯に指を突っ込んで目の周りを描いている。


「……神の末裔、それは文字通り、神の遺伝子を持つモノだ。それを証明する事は難しい……神は人に細工をして、人そのものにしているからな……だが、神は子に恩恵を齎す。自分自身、感じた事はないか?こんな世界に代わった時、自分だけ違うモノを得た、明らかに、神に愛されていると思った事は……」


自分だけ、違う……それ、は……。

……事前登録。俺だけ、このガチャシステムが導入された世界で、事前登録していた。


「神の恩恵は様々だ。自分が自覚してなくても、神の恩恵は齎されている。まぁ、此処に呼び寄せられた時点で、神の末裔である事は定められているがな」


そうだ……此処は何処だ?

周囲を見渡す、宇宙空間に投げ出されているかの様だ。

暗い背景には数々の星が舞っている。後方を見れば、俺の母星、地球らしきものが浮かんでいた。


「残る神の末裔は八名……ですが、その大半が拒否していますね」


そう幼い少女の様な声が聞こえて来て、俺は振り返った。

其処にはやはり、髪の毛を二つに結んだ小さな少女が居た。

白い布のカーテンを巻いた様なドレスを着込んだ、分厚い書物を持つ、少女だ。


「これが私の恩恵だ。全てを知り、神の近くに置かれたモノ……名を、ルール」


法則ルール……。これが、シュテイルの恩恵、なのか?


「ルールが居たから、私には事前にこの世界がどうなっているのか理解する事が出来た。言うなれば、知識チート。と言うモノか」


知識チート。

それがシュテイルの神に与えられた恩恵、と言う事なのか。


「七名が拒否をする理由は分かるが……最後の一人は何故拒否をする?」


「さあ。興味無いんじゃないのですかねぇ?」


「一応は神の遺言だろう。無理にでも連れて来てくれ」


と、シュテイルが言うと、仕方なく。ルールはその場から消えた。

そして、瞼を瞑るよりも早く、ルールが男性を連れてきた。

白と黒のメッシュをした男だ。

白スーツの下には何も来ていない、素肌が見えた。


「これで全員だ。さあ、遺言を聞かせて貰おうか」


そうして、シュテイルが話を進めだした。

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