第75話
アビリティ・〈クリティカル・ノッキング〉
電力50%を消耗する事で一時的にクリティカルが発生するアビリティ。
クリティカルの条件は、対象に攻撃を行い、部位に接着した瞬間に発生し、その攻撃は対象の弱点へと集まる。
当然ながら、人間程度の弱い拳じゃあ、相手に致命傷を与える事なんて到底不可能だ。
だからこそもう一つのアビリティによって昇華される。
アビリティ・〈ゾーン〉
装備した対象者のスマホ残量が10%を切った時、対象者の能力値を底上げする。
残量が10%の状態だと二倍、9%になれば三倍、8%になれば四倍、と。
自分が死に近づけば近づく程に強化されるアビリティだ。
俺の残存電力は僅か5%。先程の〈クリティカル・ノッキング〉を発動した。
これによって俺の能力値は七倍。
〈夜の王〉マータッドは目の前にある暗闇全てが彼だと言う。
ならば、〈クリティカル・ノッキング〉の能力が適応される。
本来は、俺が攻撃を仕掛ける時。マータッドがそのまま俺との接近戦を行うと思っていた。
または闇の霧を出して俺を拘束した後、無策だと嘲り不用心に近づき煽ると。
マータッドが勝負そのものを放棄して遠くへ逃げる事は想定していなかったが。
まあ結果的には俺のアビリティ構成に嵌る様な能力を使ってくれて良かった。
そして、俺の一撃を喰らったマータッドはそのまま弱点へと向かっていって、破壊されて消えた。
呆気ない一撃だ。彼は断末魔や最後の言葉すら無く散っていったのだ。
そして、残るは〈汞の王〉ゼシルだけだが……。
「はぁ……はぁ……、まさか、マータッドがやられる、だなんて」
そう言いながら、アルターが消滅していくのが見えた。
〈時の歯車〉アルターを、まさか倒すだなんて。
「一体、どうやったのかは知らないけれど……まあ、良いわ。私の目的は貴方を斃す事ですもの。だから死んで」
〈汞の王〉ゼシルが滑走して接近する。
俺は彼女に向けて拳を突き出す。
その攻撃を彼女は簡単に避けて、汞の針を俺の横の太腿に向けて貫いた。
痛みが起きる。苦痛が声となって漏れる。それでも。その水銀の針は彼女の体に続いている。
だから、俺は、その拳を思い切り、水銀の針に向けて放つ。
その一撃〈クリティカル・ノッキング〉が発動する。残量が3%を切った為に、その威力も九倍。弱点を破壊するには十分過ぎる威力。
「ッいいわ、やりなさい。私も、もうやったから」
それが彼女の言葉だった。
俺の攻撃を受けた〈汞の王〉は、悔しそうな表情を浮かべて、その場から消えた。
残ったのは、眠る人たちと、眠りを操る淫魔だけだった。
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