第30話

その後、俺は玄武さんの様子を見る為に〈楽園の箱庭ミニチュア・ガーデン〉へと訪れた。


「大丈夫ですか?玄武さん」


玄武さんは包帯まみれだった。召晶石を使って回復薬でも出そうとしたらしいが、出てきたのは〈身包みの癒し包帯テーピング・ヒーリング〉と言う包帯を巻く事で肉体を徐々に回復させる能力を持つアイテムだ。


ガチャでありながら、中々好都合なアイテムだが、玄武さんはそれを引き当てるのに三十連程ガチャを回したらしい。

俺が驚いたのはガチャを回した事では無く召晶石を三百個以上持っていた事だ。

この世界がファンタジー世界に代わって一週間、俺でさえ召晶石を集めても五十個ですら取れなかったのに。

けど、俺は対して詳しく聞く真似はしなかった。なんだか、がめつい人間だと思われそうだったからだ。


「まあ、流石に一日程度で良くなるワケねぇよ……つか便利なアイテムだな、コレ、レアリティなんだ?金色か?」


「えっと、一応、虹色ですけど」


虹色、そう聞いて寝たきりだった玄武さんが飛び起きた。

なんだか、目を丸くして驚いている様子だった。


「に、虹ッ!?マジかよ、出るのか、アレ!?」


「えっと、俺は、事前登録してたから……色々特典貰えたんです」


虹色確定ガチャチケットを貰った事を告げると、事前登録があった事を知らなかったらしい。


「はぁ~……そんなもんあったのかよ……それがあったら……」


随分と残念そうにしていた。

まあ、虹色確定ガチャチケットがあれば、この世界でも相当なスタートダッシュを始める事が出来ただろう。


「俺だから良いけどよ……それあんま人前で言うなよ、狙われるぞ?」


「どうしてですか?」


「どうしてって……はぁ………説明は省くが、複数の人間とチャット出来るアプリがあるんだが……」


多分、ガチャで引き当てたアプリなんだろう。

匿名掲示板みたいな、あるいは、アバターを作って会話をするものか。

流石にどういう形態であるかは分からないが。


「ざっと百人ぐらいが情報提供しててな、その情報には、未だ、誰も虹色を引き当てた奴は居ないらしい。都市伝説、運営の確率操作、吊られた人参、そんな風に言われる程にな」


じゃあ、虹色は物凄く確率が低いのか……。

いや、もしかすれば、確定ガチャじゃないと出てこないのかも知れない。


「えっと、ついでにですけど。俺の職業も、召喚獣、それと武装甲。これ全部虹色です」


そう言って俺は口を閉ざした。

これではまるで自慢の様ではないか、そう思った。

そして、玄武さんは訝し気な表情をして、やはり。


「なんだよ……いや、驚かねぇけど。自慢かそりゃ?」


あぁ、そういう風に捉えられてしまった。

けれど玄武さんは其処まで妬んでいる様子は無く。

軽く俺と玄武さんは雑談をして、其処から互いに本題に入るのだった。

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