定期刊行誌カクヨム!(旧 週刊カクヨム)

とざきとおる

連載作家様の作品紹介「週刊カクヨム (非)公式レビュー」

第1弾 「化け物」の世界を旅しよう。その世界の価値を見るために。

週刊カクヨムはたくさんの連載作家様に支えられて現在も頑張れています。

私も参加してくださった皆様に少しでも感謝と誠意を見せるべく、作品を拝見してその世界観と向き合っているところです。


しかし、皆さんすごいですね。私では書けないものを書いているのは尊敬できます。なので、そんな偉大な作品をぜひ紹介していきたいと思いたち、始めたこの企画。


私の体は1つしかないので、どうしても読む順番ができてしまい、作家様の間での待遇の差別化になってしまうのではと恐れた部分もありましたが、それでも、週刊誌を企画している自分にできることならなんでもしたいと思い、開始を決意。他の皆様の作品もいずれは紹介できれば思っていますのでお待ちいただければ幸いです。


記念すべき第1回はこの作品!(一応掲載の許可はもらってます)


化け物バックパッカー ~バックパッカーの老人と、見ると恐怖に襲われる化け物の少女~


https://kakuyomu.jp/works/1177354054895479999



主役は怖い顔のおじいさんと『化け物』となった少女。

この世界での『化け物』とは、化け物病と呼ばれる疫病にかかった人間のことを指す。腕や足など、体の一部が大きく変形し、見目が醜い姿へと変化する その上、悪化すると人を襲うこともあるらしい。おじいさんは人間だったころの記憶がない『化け物』少女と出会い、世界を見て回りたいという願いを聞き入れてから2人の旅は始まった。


今回紹介する作品は短編集となっていて、最初の1話を読んでからは、基本的にどの話から読んでも話の内容が分かるようになっている。

1エピソードは長いものでも15分あれば読めるほどに短く、それでいてその世界観に没入できた満足感を得ることができる。


主役のおじいさんは、先ほど怖い顔と言ったが読み進めるほどチャーミングな一面をのぞかせる。対して『化け物』の少女もまた、素直であるが故に、この老人との相性がそこそこ良く、奇妙な組み合わせ2人に始めは見えたとしても、そのうちそれが自然になっていくこと間違いなし。


そしてエピソードごとに出てくる『化け物』との掛け合いは、この話に一番の面白味となっている。


どのエピソードもとても面白かったものの、特に印象的だったのはこれ。

「化け物バックパッカー、大雨の結婚式に出席する。―新郎新婦は互いの腹に入刀する。ひとつとなり、ともに旅立つために―」


ただしこの話に感動をするには、これだけを読んではいけない。いや、作者様がどこからでも楽しめると言っている以上、それは本来私が言ってはいけないことだろうと思うのだが、他の話をいくつか見た後でこの話を見れば、きっと作者様のみが知るこの「化け物」の世界の奥深さに少し触れることができた気がしたのだ。


さて個人的なお話はさておき、主役の2人が旅の中で、見た目、正確、特徴、様々な『化け物』と出会い、交流をしていく様子はとても微笑ましい。

一方で、作中では人間が化け物を見ると強制的に恐怖を駆り立てられるため、人間によって残酷な運命を迎える『化け物』もいる。そんな残虐な一面も垣間見えるのもまたこの作品が単なるほのぼの作品ではないことを印象付ける。


それでも『化け物』はそんな自分達に厳しい社会の中で彼らなりに生きている姿を見れば、心が温まるにちがいない。

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