第2弾 激動の時代を舞台に、これは正に『国の戦い』がテーマの熟考された物語だ。

 作品<小国の王太子、美人だが有能ゆえ男に嫌われる選帝公ご令嬢と結婚する。>

「婚約破棄された優秀な大貴族令嬢が小国の王太子に嫁ぐお話」

作品はこちら→https://kakuyomu.jp/works/1177354054897115581



 唐突にこんな話をするが、自分の支配する領地を持つ貴族や、国の代表者としてロールプレイするようなシミュレーションゲームをやったことはあるだろうか?

 私は苦手だ。

 だって考えることが多すぎるもの。

 自分の国を治めるのだって、食糧、資金、人材、軍備、経済、外交、などなど。

 ゲームの中では、部下はおおむね自分の言うことに従ってくれる前提だが、それらが生きた人間だとそうはいかない。自分の領地の中で様々な問題が起こり、それに対処する必要もある。

 では、そこにさらに、他国や自国、または国をまたいで活動する宗教や組織からの謀略を仕掛けられ、それに対処する必要もあったら?

 無理。

 頭がパンクする。

 じゃあ、自分の頭の中で、それを数か国分考えてねと言われたら?

 ふて寝する。


 しかし、統治者とその周辺の世界を扱うのならば、本来はそれらの要素は無視したくともできないはず。むしろ、貴族や国の上層部の人物を扱う物語であれば、そこが見せ場でもあるのだから。




 長々と前置きを置いてしまったが、今回紹介するこの作品は、その辺りの話をしっかりを書いているので、非常に好印象だった。


 それぞれの事情は、未だすべてを語られていないだろうが、十分に深く考えられていることが序盤の方でもう窺える。


 読んでいると最初の内はいろいろな国や名前が出ているので理解が大変かもしれないが、逆に言えば、それだけ作者がこの世界の設定をしっかり練り上げていることが感じられる瞬間だ。


 ナーロッパ。

 その中にある国々。

 アストゥリウ、フラリン、ロアーヌ、リューベック。(実はまだあるがそれはネタバレも怖いのでこの辺りで留めておく)

 正直、この時点で、個人的にはすごくおしゃれな名前だと思うが、何かを参考に書いているのだろうか? 1から考えているのならすごいと思う。

 それらの国々の王や皇太子の名前はもちろん、それぞれの国にいる侯爵の名前、教会の司祭の名前、国を支える卿らや臣下の名前、結構な数が作中には出てきて、単純によくこんなに考えたなぁと感心するほかない。

 そしてそれを作品の中で、混乱することなくしっかり書ける作者はすごいと本当に思う。



 作中ではその世界での歴史の転換点とも言えるようなタイミングから始まっている。その分、激動の時代を越えようとする貴族や皇太子の軍事、政治的施策や駆け引きが多く必要な中、それを細かに書き、読者をしっかり理解できるようにしているので、面白さが十分に感じられるところが素晴らしかった。


 レビュー主個人の感想としては、「本格派だ……こんなに書けるのすげー」という感じだった。


 ……ここまで皇太子と貴族令嬢の話には触れていないが、そこはぜひこの物語を楽しみつつ、2人を追ってみてほしい。ここでネタバレしたらそこは面白くないと思ったので。ただ、結構興味深い関係になりそうで、最終的にどこに行きつくのか楽しみだということは言っておく。 

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