第78話

 ミナに会った後、俺は寝静まるのを待ってネルソンの宿に向かった。


 そして、いつもの様に気配を隠して枕元に立つ。

 どうやら、警戒を強めていたらしいが、万魔殿でさらに研ぎ澄まされた感覚の俺には意味が無い。


 今ならネルソンがここまで警戒している理由も分かっているが、あえて以前と同じ様に気配の揺らぎを見せ、飛び起きたところで声を掛ける。


「久しぶりだな、ネルソン」


「うわぁぁあ……ってゲイルか毎回毎回脅かさないでくれ」


 目をきょろきょろさせ落ち着かない様子のネルソン。


「済まないな、それよりも大事な話だ」


「……そうか、なら聞こう」


神冠レガリアを手に入れた。カーリーン神復活の儀式を進めてもらいたい」


 俺がそう伝えるとネルソンはさほど驚いた様子を見せることなく頷くと言った。


「こっちも神壇の場所は判明した。儀式を行うのなら満月が好ましい。あと四日待ってくれ」


「そうか分かった」


「それから、儀式の準備には神冠が必要なので私に預けてくれないか」


 ネルソンにそう言われ、俺は古ぼけた木の葉で編まれた冠を渡す。


「はぁあ!? これが本当に神冠だと?」


 戸惑いを隠せないネルソンに俺は説明する。


「万魔殿の最下層にいた古龍ラー・カイラルより勝ち取った冠だ間違いない」


「そっそうなのか!? まあ神代の時代より続く冠ならそうなのかもしれないが……」


「兎に角。儀式を進めてくれ、頼んだぞ」


「しょうがない。分かった。四日後リンガミルの中心にあるカタコンベに来てくれ、儀式はそこで行う」


「済まないな、宜しく頼む」


 俺はそう言い残してネルソンの元を去った。



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