第15話

 その日のクラリスは荒れていた。


 理由は初めてクエストを失敗したからだ。


 昼間からお酒を飲み、パーティメンバーに絡み酒。


 いくらオフの日とはいえ迷惑極まりない。


 俺は酔っ払いの相手を引き受け、他のメンバーを開放させる。


 アヴェルだけは自分も飲みたいからと付き合ってくれ、結局夜遅くまで飲むことになった。


 いつものように立てなくなったクラリスを担ぎ借家まで戻る。


 途中寝ぼけたのか名前を呟いた。


「アヴェルごめん」と。


 なんの夢を見ていたのか分からないが、胸の奥がざわめいた。


 別に二人の関係を疑っている訳では無い、親密な様子を見せることはあるが、あくまで仲間としての距離感なのは見て取れた。


 それでも言いしれない想いが込み上げてくる。

 無力だったニーナの時のように。

 俺は彼女の力になれているか不安になる。


 そんなつまらない考えを引きずったまま家に着くと、喉が乾いたのか、目を覚ましたクラリスが水を強請る。

 俺は飲み水をコップに汲んでくると手渡す。

 受け取ったクラリスは一息に水を飲み干した。だが表情は酔ったままで、俺に寄り掛かると甘えるようにキスを強請りだす。


 何となくそんな気分ではなかった俺は、軽いキスだけで済まし「飲み過ぎだ」と注意してそのまま寝かし付けた。





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