第86話
ネロの頭上に燦々と光輝く輪環。
その神々しさは、正に畏怖すべき破壊の権現。
そんなネロに俺が見惚れていると、当のネロが首を傾げるとこちらに視線を向けた。
「なあ、ゲイル。これ殆ど力を失っているぞ」
それはラー・カイラルからも聞いていた通りなので別に驚きはしない。
しかし、どうでも良いことにまあアイツがいちいち反応する。
「力が失われているだと、じゃあ神々を従えるという力は」
「ないな」
「それでは、私のやった事はなんなのだ。あの男から脅され儀式を遂行し、破壊の神を蘇らせただけではないか」
おいおい、その功績があるから見逃すつもりだったのだが、こうも利己的で自己中心的な言葉ばかりを並び立てられると腹が立ってくる。
「なんだお前。それだけでは不服なのか?」
一方で先程まで怒りを向けていたネロは逆に落ち着きながら語りかけるも、視線は相変わらずゴミ虫を見る時と変わらない。
「当たり前だ。これでは私には神の王の座どころか、神の力さえ得ることが出来なかったんだぞ。私の目的が、戦闘狂の人間如きに阻止されるなどあってはならない事だろうが」
話している相手がネロだという事も忘れたのか、強い口調で自分勝手な言い分を恥ずかしげもなく言い放つ。
「なるほどお前は神の力を求めていたのか、そうか、そうか、ならばわらわを蘇らせた褒美だ。お前に神の力の一部を授けよう」
「へっ!? ほっ、本当ですかカーリーン神よ、本当に私に神の力を授けてくれると」
「ああ、わらわの力のいったんをお前にくれてやる」
ネロはネルソンにそう言い放つとこちらに向かって瞬きをした。どうやらウィンクのつもりらしい。
それなりに付き合いが長いのでネロの意図する事は理解した。
ネロとしては不敬をはたらいたネルソンには散々脅すような事を言っていたが、ネルソンが復活を手助けした事実は間違いない。
ならば神の立場としては、ネルソンには借りを返さないなわけには行かない。だからこそ一度ネルソンの望んだ力を与える。
これでネルソンへの借りは返したことになるからだ。
そして、力を得たネルソンは当然。
「ふっ、ふっ、フッハハハハ。残念たったなゲイル。最後の最後で信じていたカーリーン神に裏切られるとは哀れな。クラリスの事といい、本当にお前は裏切られるのがお似合いの人生だ。私を謀り、殺そうとした報いを今ここで受けるが良い」
そんな言い掛かりも甚だしい言葉と共に、俺に牙を向いた。
――――――――――――――――――――
読んで頂きありがとうございます。
評価をしていただいた方には感謝を。
続きを書くモチベーションにも繋がりますので
面白いと思っていただけたら
☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。
もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます