第83話

「ふっふっふ、どうだ驚いて声も出まい。切札というのは最後まで隠しておくものなのだよ」


 ネルソンの勝ち誇った声が響く。

 うーん、まさかこうなるとはな残念だ。


「どうだ騙したつもりが騙された気分は、悔しかろう、だが私を謀った罪は重いぞ、だからもっと悔しがらせて後悔させてやろう。さあ、女神カーリーンよ神冠レガリアの威光の前にひれ伏し、我の命に従い、我が元へ来い」


 ネルソンが仰々しくネロに命令する。

 ネロはネルソンに命令された事で目から光が消えユラユラとネルソンの元に向う。

 全く、何をやってるのだろうアイツは。


「いいぞ。カーリーンよ、我に忠誠を示す為に誓いの口づけをここに」


 ネルソンが右手を差し出し、手の甲へ従属の意思を示せと促す。


 そしてネロはその手を取ると怒りに任せてぐにゃりと握り潰した。


「うギャァァァあ」


 ネロのハイライトのない暗い瞳に見下げられながら、手の痛みに蹲るネルソン。

 いや、本当に何をやっているんだかネロにあんな偉そうに命令するなんて自分から死にに行くようなものだ。


「何を戯けた事を言っているのだ、たかだかエルフ風情がわらわを誰と心得る」


 だが思ったよりネロは怒っていないようだ。

 まだ話す余地が残ってるのがその証。


「ばっ、ばかな、何故私の命令に従わない、私は、私は神の王になったんだぞ、神の王になるはずなのに」


「神の王だと、本当に痴れ者か? こんなちゃちな王冠で神々を従わせれるのなら苦労せぬわ」


 ネロはネルソンの頭上にある王冠に手を触れる。それだけで王冠は灰となって消え失せてしまった。





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