第91話

「うーん。ネロを復活させた理由なんてひとつよ、一緒に世界を滅ぼしましょう。いまなら私も力が戻ったから」


「やはり、お前力を失っていたのだな」


「ええ、そこのトカゲモドキのくそジジイにね。貴方を封印する際の力として、まんまと私の神力を使われたわ。おかげで今の今までただの人間と変わらない力しか使えなかったんだから」


 ネロがラー・ブレスカを見る。


「うむ。汝の力を封じるのに、そやつの【殲戮神セクメト】の力を利用させてもらった。ある意味で汝以上に危険な存在だったのでな」


「そうか、ならば今は遠慮なく力を振るうことができるんだな」


「アハハ、そうよ、だから一緒に力を思う存分に振るって世界を壊してしまいましょう。エルフも獣人も人間も、その他諸々の人類種なんて結局は原初の神を模倣した紛い物。この世界に生きる価値なんて無いのだから」


「ミリアーナ。本当にそれがお前の望みだと言うのだな」


 ネロの気配から怒りが消え、どこか憐れみすら感じさせる表情でミナを見ていた。


「ならぬぞ、カーリーン神よ。汝に世界を滅ぼす理由などもうなかろう」


「そうでしょうか? ネロは出来損ないの人間種達に裏切られたよですよ。ならばそれを滅ぼして何が悪いというのですか?」


 ラー・ブレスカを鋭い眼光で睨みつけたミナは、一転して笑顔に変わりネロに向けて手を差し出す。


「さあ、ネロ。今度こそ私と一緒に、この偽りの世界に破滅の救済を」


 ネロは変わらず悲しげな眼差しでミナを見ていた。そして何かを決意したのか俺の方に振り返ると意味深に頷き、ミナに近づきその手を取った瞬間たった。差し出されていたミナの右手が粉微塵に爆ぜたのは。



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