第38話
半年も待たずに迷宮は四十階層まで制覇した。
あれだけ苦労していたのが嘘のように。
改めて自分の手に入れた力を実感する。
もし、あの頃この力があれば……。
思わず感傷に浸るのは久しぶりに彼女の姿を見たからだろうか。
張り詰めた空気と悲壮感を纏ったクラリスを。
もう未練は無いと思っていた。
会ったところで何も感じることは無いだろうと、それほど俺の中では彼女との時間は過去になっていたはずだった。
だが実際は思った以上に心は揺れ動いた。
もちろんやり直したいとかそういう淡い期待などではない。
ただ彼女の姿が哀れに思えただけ。
そう、それだけなのだが、そう思えるほどクラリスに対して心を残していたのだと自分自身に驚いた。
力を求めて俺を切り捨てた彼女。
彼女に切り捨てたれたことで結果的に力を得た俺。
何とも皮肉な結果だ。
ひと目見て分かったが、彼女では俺に勝つことは不可能だ。それこそ剣だけの勝負であったとしても……だからだろう情が湧いたのは。
最後くらいは俺の手で引導を渡してやろうという最後の情が。
――――――――――――――――――――
読んで頂きありがとうございます。
評価をしていただいた方には感謝を。
続きを書くモチベーションにも繋がりますので
面白いと思っていただけたら
☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。
もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます