第101話

 ネロを連れてニーナのもとに訪れると、彼女は見知らぬ少年を看病していた。


 ニーナによると、最近母親とリンガミルにやってきたらしいが一緒に来た母親も亡くなり、頼りの伝であった叔父とも連絡がつかず行倒れていたところをニーナが保護したらしい。


 そして珍しくニーナからお願い事をされた。


「一流の冒険者の冒険者である兄さんなら、霊薬と言われるエリクサーをお持ちではないですか?」と。


 その答えは簡単で持っている。

 万魔殿の下層を攻略中にそれなりの量を手に入れていたからだ。

 ただこの薬は不治の病を治す特効薬として金持ちの間では高額で取引されていたので市場に回すのをためらっていた。


「……その子が病気なのか?」


「はい。医者に見せたところ、根本的な病はエリクサーでも使わない限り治らないと言われました」


 何となく、懐かしい顔が思い浮かんだ。


「そうか、その子は運が良かったな」


 俺はそう言ってニーナにエリクサーを手渡す。

 別に善意からではない、この子が助かったのは本当に運が良かったから、ニーナに拾われ、タイミング良く俺がニーナの元に訪れた。そして俺が迷宮でエリクサーを手に入れていただけ。巡り合わせだ。それこそノートンがたまたま行倒れた俺を拾ってくれたように。なんとなくだがそう思った。


「兄さん。お代は」


「寄付とでも思っておけ、どうせそうそう世に出せない品だしな」


「ありがとうございます。兄さん」


「いや、構わない。それより俺がここに来た理由だが、そろそろリンガミルを離れ旅に出ようと思っていてな、その挨拶と、そのなんだ。俺のパートナーを紹介しておこうと思ってな」


 俺はニーナにそう告げると、後ろに控えていたネロを紹介した。


「うむ。わらわはネロ・カーリーン。パルネフ帝国のこう……ではなく、新人冒険者だ。これからゲイルと世界を旅して回るつもりだ。よろしく頼むぞ妹殿」


 ネロが予想以上に社交的な挨拶をし、ニーナと握手を交わす。


 ニーナも驚きはしていたが直ぐに笑顔に変わると。


「そうですか……おめでとうございます兄さん」


 と、祝福してくれた。


 その後、しばらく歓談した後。件の少年にエリクサーを飲ませ回復したところを見届けて、俺達はニーナの元を去った。


「また。今度な」と気軽に別れの挨拶をして。


 いずれリンガミルに戻る事もあるだろう、その時は「久しぶり」と顔を見せれば良い。

 道は違えどニーナは妹だから、気遣って堅苦しくする必要もないだろうから。


 そうしてニーナに別れを告げ後、しばらくして俺とネロはリンガミルから旅立った。


 ちなみにデュランは四大迷宮の単独踏破を試練として与えられたのでリンガミルに留まった。

 いざという時の連絡要員も兼ねて。





――――――――――――――――――――


読んで頂きありがとうございます。

評価をしていただいた方には感謝を。



こちらも終盤と言うことで

新作開始します。

自分なりに楽しく書けているので、そこそこ楽しめるのではないかと思います。


合わせて読んで頂けたら嬉しいです。


《タイトル》

『覇者転生 〜スローライフなにそれ美味しいの?』


https://kakuyomu.jp/works/16818093077307679991



こちらも引き続き応援してくれると嬉しいです。

面白いと思っていただけたら


☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。


もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。

  






 

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