第50話
決勝戦。
いよいよクラリスとの戦い。
ただクラリスと語る言葉は無い。
剣で示すのみ。
それで真意が伝わらなければそれまでだろう。
俺は呼吸を調えると闘技場へと向う。
クラリスはすでに会場で待ち構えており、恍惚といった表情で俺を見ていた。
『血に酔ったままか』
準決勝のクラリスの試合を思い出す。
血に塗れた凄惨な戦い。
ネロの力を利用しているのなら考えられ可能性ではある。
ネロ自身戦いで興が乗ると殺戮衝動に駆られ、暴走がちになる時があったからだ。最初の頃はそれで何度も瀕死にまで追い詰められたのは懐しい思い出だ。
まあ、つまりその時のネロに比べれば、今のクラリスなんかは可愛いものだろう。
俺はネロとのやり取りを思い出し思わず笑みがこぼれる。
「ああゲイル。私と会えてそんなに嬉しいの?」
それを見たクラリスが何か勘違いしていた。
しかし、俺は特に言葉を交わすこと無く、一礼すると戦闘態勢に入る。
これは俺が見せてやれるノートンの教えの極致。
先の先のさらに先。
未来予知にも近いそれはネロすらも唸らせた。
相手の一挙手一投足まで予測し、予測した動きを元にこちらが意図した動きに導く。そして相手は自分の動きがコントロールされたものであると気付かないうちに勝負が決まる。
俺が見えたビジョン。
クラリスの初手は仙気を解放し、二刀流からの十六連撃。
それを予測通り放たせる為、クラリスにとって絶好の間合いに飛び込む。クラリスは予測通り仙気を纏い連撃を放とうとする。しかし俺は仙気を練る一瞬の隙を狙い、神速の抜刀術で片腕を斬り落とす。
だがクラリスは片腕を失ってなお、動きを止めない事は分かっていた。
残った片腕から放たれる八連撃。
クラリスの得意とする技。
あの時剣聖の座を掛けた勝負で俺が返さなかった技。
それを今度は全て往なすとカウンターで一閃。
残った片腕も切り落とされたクラリスが血を失い過ぎて倒れる。
今のやり取りは、観客たちの目からすればほんの数秒の間で行われた。
静まり返る闘技場。
勝負が一瞬でついた事を理解した審判が慌てて治療師達を呼び寄せる。
俺は為す術なく敗れ去ったクラリスを一瞥すると、ノートンの刀を餞別として添えてやる。
そして俺は無言のままの会場を後にした。
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読んで頂きありがとうございます。
評価をしていただいた方には感謝を。
初めて長編のコンテストに応募します。
少しでも多くの方に読んで頂けたら嬉しいです。
《タイトル》
『ダンジョンエクスプロード 〜嵌められたJKは漆黒宰相とダンジョンで邂逅し成り上がる〜』
https://kakuyomu.jp/works/16817330664753090830
こちらも引き続き応援してくれると嬉しいです。
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