第20話

 部屋の中には恐ろしい形相をした女神らしき巨大な彫像があり、その手前には大きな亀裂が走り深い穴が行く手を阻んでいた。


「前に来た時と変わらないな」


 俺がそう言うと、気のない返事でクラリスが答える。


「そうね」と。


「で、どうすれば良いんだ?」


「そこに膝をつく台座があるでしょう、そこで女神に祈ってくれる。そこに私が強くなれるようにって」


 言われてみれば彫像に向き合う形で、亀裂の前に石造りの低い台座があった。


「そんなので良いのか?」


 なんだか胡散臭い話だがクラリスの目は真剣だった。


 俺は言われた通り台座に膝をつく、すると突然クラリスが後ろから抱きしめてくる。


「ありがとう。愛してる」


 クラリスの言葉に俺は頷くと、言われた通り目を閉じ願った。


『クラリスを強くしてくれ』と。


 心の中でそう願いを込めていると、後ろから抱きしめられていたクラリスの感触が離れる。それと当時に背中に強い痛みが走った。振り返ると泣きじゃくるクラリスの顔。


 わけがわからない。


「ごめんね、ごめんね……」


 ただ体が痺れはじめ薄れる意識の中、最後に聞こえたクラリスの声。俺はその謝罪を聞きながら亀裂の入った深い穴へと落ちて行った。




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