第21話 クラリス視点
泣きじゃくり膝から崩れ落ちた私の目の前で女神像が光を放つ。
どうやらネルソンが言っていた事は本当だった。
女神の力を授かり『
愛する人を生贄に捧げ得られるクラスと聞かされていた。
だから私はずっと一緒だったゲイルを私は生贄に捧げた。
でも、そこまでして手に入れた力なのに喜びなんて何も無かった。
あるのは喪失感と罪悪感。
ここにいたら、ゲイルの後を追って穴に飛び込みたくなる。
でも、そんな事をすればゲイルを犠牲にしてまで手に入れた力が無駄になる。
矛盾してまとまらない考えのまま、私は止まらない涙を流しながらその場を去る。
帰還石を使いギルドの帰還ポイントに転移すると、そのままふらふらとリンガミルの街に戻る。
とてもじゃないがゲイルとの思い出が詰まった家には戻れない。
戻る場所の無い私は、自分を慰めてくれるであろう男の元に向う。
男は私の顔を見るなり。
「辛かったな」と言って抱きしめてくれた。
そして一晩中泣きじゃくる私の側で慰めてくれた。
もう家に戻れない私は彼の家で時間を過ごした。ぼうっとしていても思い出されるゲイルとの日々、涙が勝手に溢れ出す。
前に進むために自分で決めたことなのに、覚悟を決めて自らの手を汚したのに。
望んだ力を手に入れたはずなのに。
晴れることのない私の暗雲の日々が続いた。
見かねた男は、忘れさせてやると半ば強引に私を抱いた。
最初は何も感じなかった。けれど何度も荒々しく抱かれるうちにその時だけはゲイルを忘れる事が出来た。
ゲイルではなく目の前のアヴェルを感じる方が出来た。
ようやく私がまともに話せるようになったのは一月たった頃。
私は自分の口で、デュランとミナにゲイルが失踪したと嘘を付いた。
理由は痴情のもつれと言うことにして……二人共ここ最近の私とアヴェルの関係には薄々気づいていたようで驚かれなかった。
ただミナから明らかな侮蔑の視線を送られた。でも私の本当の罪を考えれば侮蔑なんて程度軽いものだ。それくらいの汚名など喜んで背負ってやる。
ゲイルを犠牲にしてまで望んだ道なのだ。
だから、なんとしても、どんな手を使ってでも剣神になってやる。
そう、私は心に固く誓った。
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読んで頂きありがとうございます。
評価をしていただいた方には感謝を。
こちらも終盤と言うことで
新作開始します。
自分なりに楽しく書けているので、そこそこ楽しめるのではないかと思います。
合わせて読んで頂けたら嬉しいです。
《タイトル》
『覇者転生 〜スローライフなにそれ美味しいの?』
https://kakuyomu.jp/works/16818093077307679991
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