閑話 アヴェル①

 俺には使命がある。

 相棒でもあるネルソンも別の目的があり、利害が一致し、各々の目的のためにリンガミルに来た。


 本来なら上位ランクの冒険者のパーティに入り込めれば良かったのだが、そうそう上手くいくものでもない。なので知り合いだったデュランの力を借りて、新進気鋭の有力パーティ『極光の刃』に加入する事が出来た。


 どうやら運悪く、俺からすれば運良く、仲間を失いパーティメンバーを募集していたところだったので、俺とネルソン二人で加入することが出来た。


 パーティのリーダーは剣聖の称号を持つ剣士の女。容姿は悪くない割と俺の好みだ。

 ただメンバーのゲイルという男と恋人同士らしい、いい女だが口説いて折角入ったパーティを壊すのは俺の目的にはそぐわない。


 なので、しばらくは余計な事は考えず使命のために迷宮攻略に勤しんだ。


 しかし、三十階を過ぎた頃から明らかな戦力不足を感じるようになった。


 理由は分かっている。


 リーダーであるクラリスだ。


 あいつはなんのこだわりが有るのか冒険者として有用なスキルを獲得していなかった。


 愚直に剣技だけで迷宮の魔物共に立ち向かい続けた。


 並の相手ならそれで通用したのかもしれないが、この辺りの階層になると剣技だけではどうにもならない事もある。

 それこそ物理攻撃を遮断するようなやつもいる。


 そんな相手に剣技だけでかなうはずがない。


 俺は率直に進言した。


 もっとスキルや魔法具を活用しろと。


 クラリスは謝りながらも自分のスタイルを変えようとはしなかった。


 俺は表面上は穏やかに接したが、内心腹を立てていた。


 そしてネルソンも同じ様に考えていたらしく、戦力不足を感じ、迷宮攻略が進まないことにわだかまりを感じていた。


 ネルソンとしてはスカウトとしては平凡なゲイルの変わりに上位互換のレンジャーをパーティに入れたがっていた。


 しかし、クラリスとゲイルが別れることは考えにくく、今後どうするか二人で思案するようになった。


 

 



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