閑話 アヴェル②

 チャンスは偶然だった。


 ゲイルと喧嘩し、やけ酒を飲んでいたクラリスに付き合った。


 散々愚痴を聞かされ、自分の弱さを嘆かれた。


 慰めている内にちょっとした本心を聞かされた。


「ゲイルを見ていると自分自身の力の無さを感じて辛いと、彼は剣の天才で、本当は剣聖の称号を継ぐはずだった、私はお情けで剣聖になったようなものだから」


 付き合いはそこまで長くない俺だが、二人はよく似ていると感じていた。

 お互い内心では自分自身を卑下している。

 きっとクラリスにとってあいつはあわせ鏡のようなものなのだろう、見たくない自分を見てしまう。

 そして近すぎる存在だからこそ話せないこともある。


 そこに付け入る隙が出来た。


 優しく話を合わせ、自信を持たせるように褒めた。

 以前指摘したことも負い目になっていたのかもしれない。


 クラリスは流され、俺に慰めを求めた。


 お互いに恋愛感情は無い。

 ただゲイルでは慰められない時に俺が変わりになるだけ、そんな都合の良い男を俺は演じた。


 そして、そのたびに囁いた。


「もっと、強くなる手段がある」と。


「その方法をネルソンが知っている」と。


 クラリスは誘いに乗り、ネルソンから強くなるための手段を聞いた。


 それは古い神に生贄を捧げて、神の力を得ること。


 最初に話を聞いた時クラリスは激怒した。当然だろう生贄は自分の愛した存在を捧げないといけないと言われたのだから。まあ、実際は愛している者でなくても良いらしい。


 ただ話を信じたクラリスが、捨てきれない想いを胸に秘めた事を俺は見抜いていた。


 だから彼女が弱って慰めを求めるたびに、力が有れば解決すると囁いた。


 ただクラリスは揺れながらも俺の言葉に傾くことは無かった。


 あの時、パーティメンバーのミナが死にかけるほどの大怪我をするまでは。




 


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続きを書くモチベーションにも繋がりますので

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