第37話

 ネルソンは自分からカーリーン神の封印についてもっと調べさせてほしいと言ってきたので承諾した。


 最初は渋っていたのに……もしかしたら調べているうち研究者として火が付いたのかもしれない。


 まあ何か裏があるのかもしれないが、協力してくれているうちは別に構わない。


 それより当面の問題は迷宮攻略だろう。


 四十階までの攻略には差し障りないが、冒険者登録をし直すのも手間が掛かる。

 俺が居なくなって三年。ネルソンによれば失踪扱いらしいので復帰はまだ可能だ。

 だいぶくたびれてはいるが冒険者証もまだ持っている。

 問題があるとすれば変な噂が立つくらいだろうが……まあ、今更だな、問題ない。


 俺はそう判断して冒険者ギルドへと向う。


 ギルド内でも気配を殺し、誰にも悟られないよう受付前までくる。

 受付嬢は突然現れた俺に驚いたが、様々な冒険者を相手にしているだけはあり、必要以上に動じる事なく続きを済ませてくれた。


 ネルソンの言う通り失踪扱いになっていたので復帰の申請と、預けていた遺書と形見分け用の品を受け取る。

 遺書はもう必要ないので破棄し、クラリスに形見として残すつもりだったノートンからもらった剣は俺が使う事にした。

 今の俺なら先の先も見える。だからこの剣。打ち合いに不向きな、切ることに特化した刀と呼ばれる代物も、もはや手に余る事は無いだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る