閑話 デュラン②

 女神カーリーンに言われた通り、俺はミナの動向を探る為、彼女を探した。

 正直に言えばなぜ女神が彼女を探らせたのかは分からない。俺から言わせればネルソンに比べても魔術の腕は落ちるし、脅威になるとは思えない相手。


 しかし女神カーリーンは俺がミナの特徴を話した途端に怪訝な表情を浮かべた。

 なぜなのかは、やはり分からない。獣人族でも珍しいアイルスロープ猫人族とはいえ、悠久の時を生きてきた女神からすれば粗末な存在。


 ましてや未だに上位職にもついていない彼女を何故それほど警戒するのか、俺はカーリーン神の真意を何も分かっていなかった。


 そして真意が分からないまま、食事処でミナを見つけた。

 彼女は陽気に酒を飲んでいた。

 一口飲んだだけで眠りかけるほど酒に弱かった筈の彼女が。


 俺は驚きを隠せないまま、彼女に語りかけた。


「ミナ、そんなに酒のんで大丈夫かガル?」


「ああデュランですか、今日は良いんですよ特別な日ですから」


 そう言って陽気に笑うミナ。

 いつもと違う雰囲気に俺は苦笑いを浮かべて答える。


「そう、何かいい事でもあったガル?」


「ええ、とっても、とってもいい事なんです。ようやくですよ、あのお間抜けなネルソンが、きっと今頃滑稽な道化を演じながら彼女を蘇らせているのです。そしてそれと共に私に掛けられた忌々しい封印も解ける。ようやくですよ、ようやくあの時の悲願が叶うのですから、こんなに喜ばしい事があるでしょうか? ねえデュランどう思います」


 そう言ってニタァっと笑ったミナの顔は、悍ましく全身の毛を震え上がらせる程に邪悪だった。


 ここにきて、ようやく俺はカーリーン神の真意を理解する事が出来たのだった。



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