第2話
目を覚ますと見知らぬ場所。
いつの間にかベッドで寝かされていた。
周囲を目で追うと、見知らぬ男と目があった。
「よう、お目覚めか?」
「ここは?」
「ああ、ここは俺の家みたいなもんだ」
「俺を助けてくれたのか?」
「まあ、結果的にそうなるな。あんなところで行き倒れてたら野獣共の餌になってただろうからな、運が良かったな」
「捨て置いてよかったのに……俺には借りを返す金も力もないぞ」
俺の返答に男は楽しそうに笑う。
「アハハハ、お前さんの見た目からしてそんなものハナから期待してないさ」
「それじゃあなんで俺を助けた」
「そんなの、目の前にぶっ倒れてる人間がいれば助けるだろう」
男がさも当然のように告げる。
つまり、この男は他の人間を助ける余裕がある側の人間だと言う事になる。
「そうか、ありがとう。世話になったな」
男の気まぐれで助けてもらった。
ありがたい事だか世話になり続ける訳にもいかない。
「まあ、待て、行くあてはあるのか?」
その質問に素直に答えるなら「ない」だが、なぜか素直にそういう事が出来ずに口を閉ざしてしまう。
「行き倒れる位だ。仕事も無いのだろう、なら俺の仕事を手伝わないか?」
男の提案に戸惑いつつ、こんな見知らぬ人間を使おうとするのだから碌な仕事ではないのだろうと見当がついた。
ただ、このまま出ていってもまた行き倒れになるのは目に見えている。
どうせ、死ぬなら汚れ仕事でも構わないいんじゃないかと思った。
「いいぜ、アンタの言う通り行くあてもないしな。好きにこきつかってくれ、俺の名はゲイルだ」
「良し、決まりだな。俺の名はノートンだ。今日はゆっくり休んで明日から宜しく頼むぜゲイル」
そう言って男は嬉しそうに俺の肩を叩いて部屋から出ていった。
翌日、食卓で男から話を聞かされる。
正直盗賊や強盗まがいのことをさせられる覚悟もしていたが、ノートンは真っ当な冒険者だった。
ただ冒険者と言っても一つの街を拠点にギルドクエストをこなすタイプで、ノートンはダグザという街を拠点に動いていた。
つまり俺はノートンの手伝いで冒険者業をやることになったのだ。
「俺に冒険者が勤まるのか?」
親父からの手解きで多少剣は扱えるが、素人に毛が生えた程度で本格的な戦闘で役に立てるとは思えない。
「なに、メインは俺ともう一人。おーいクラリス」
そう言ってノートンは大声を掛ける。すると少しして赤みがかったショートカットの女が食卓に入ってきた。
「ふわぁぁあ、なんだよ親父朝っぱら大声だして」
少し寝ぼけているのか目を擦っている。
寝起きは弱いタイプのようだ
「ああ、こいつが今日から俺達の仲間になるゲイルだ」
「ふーん、お前が親父が拾ってきた行き倒れか〜」
間延びした返事で言葉を返すと、少しづつ意識がハッキリしたのか目に力が宿ってくる。
そうしてパッチリと目が見開かれるとちょうど俺と目が合う。
「きゃあぁあ、見るなー」
そう叫んで慌てて食卓から出て行く。
確かにクラリスと呼ばれた娘は、ほとんど下着といっていい薄着で、露出の多い健康的な褐色の肌がさらされて目のやり場に困っていた。
「ハハハッ、すまんな騒がしくて」
謝りつつもノートンはどこか楽しげだ。
しばらくすると薄着ではないがラフな格好で再登場するクラリス。
恥ずかしいのか視線を俺から逸らしている。
「その、俺はゲイルだ宜しく頼む」
向こうから声は掛けにくいと思い、こちらから名を告げ挨拶する。
「あっ、うん。私はクラリスだ。親父からはきいている」
相変わらず目は逸らしたままだがちゃんと名前を教えてくれた。悪い娘ではないらしい。
「くっく若いな。それで先程の話の続きだが、基本的に俺とこいつがフロントだ。お前には後方でのサポートをお願いする」
「それだけで良いのか?」
聞いただけなら簡単に思えたので率直に尋ねる。
「バックアップも重要な仕事だぞ、それに最低限の自衛はしてもらう。剣は扱えるんだろう」
「まあ、多少だが」
「倒せなくとも攻撃を捌いて身を守る事に集中すれば良い、不安なら手ほどきもしてやる」
ノートンはその言葉通り剣の扱い方、特に攻撃面よりも守りを重点的に教えてくれた。
そして多少マシになったところで、俺は冒険者登録をしクエストに同行するようになった。
基本は荷物持ちのサポート。
時には陽動や囮といった事もすることはあった。
受けるクエストがそれほど難易度が高くないおかげか、俺でもなんとか役割をこなす事は出来た。
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読んで頂きありがとうございます。
続きを書くモチベーションにも繋がりますので
面白いと思っていたけたらた
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