第30話
常世の結界はやはり人間ごときにはたいした反応はしなかった。
あれはネロの封印に特化しているから、多少の異物はスルーするらしい。
ただそれでもある程度の力がなければ耐えれず死んでしまう。確かにネロと初めて会った時の俺は虫の息だった。
そして常世から出た俺は懐かしい場所に立っていた。
そこはネロを祀る祭壇。
目の前にあるのは凶悪な姿の女神像。
ネロとは似ても似つかない。
そもそもネロはもっと綺麗で愛らしい。
確かに恐ろしい面も持ち合わせているが、それだって一面に過ぎない。
実際は子供っぽい部分すらあり、そういう純真さも残っている。
けっしてあんな血肉を啜るような形相の恐ろしい女神などではないのだ。
まったく、あんな像を作ったエルフに会ったら、とことん分からせてやらねばならないな。
そんな事を考えながら、俺はネロの境遇を思い出し、思わず女神像を怒りを込めて粉砕する。
一応、問題ない事はネロに確認している。
壊したところで、今後ネロの力を掠め取る事が出来なくなるだけ、つまり上級職にクラスチェンジ出来いのだ。何ら問題はない。
もちろん常世にも影響は無い。
俺の八つ当たりに近い形で跡形も無く崩れ落ちた女神像の姿が目に写る。
うん、スッキリした。
今度像を作るならネロに相応しい美しい像にしなければな。
鬱憤も晴れ気分を良くした俺は、そのまま部屋を後にした。
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