第29話

 あれからどれだけ時間が経ったのか?

 もう普通の人間の感覚は無くなっていた。


 その間、ありとあらゆる事。

 自分でできる事は全て修めた。


 武芸全般は極めたといっていい。

 魔術の才はてんで駄目だった。

 しかし戦闘における闘気を纏う技術を教わり、それを仙気に昇格させ、最終的には神気を纏うまでに至った。 

 新たなクラス『狂嵐帝ルドラ』も獲得したことで、今や近接戦なら本気のネロと渡り合えるまでになっていた。



 だから俺は外に出ていくことにした。



「なあ、ゲイルー、本当に行くのか?」


 名残惜しのか寂しそうな顔のネロ。

 どこか拗ねているようにも見える。


「ああ、俺には目標が出来たからな」


「うーん、強くなること以外に興味なかったゲイルに目標が出きたのは良いことかもしれないが……あっ、もしかしていまさら復讐なんて考えているのか?」


「違う、違う。正直、クラリスの事はどうでもいい。俺が外に出るのは、ネロを常世から解放するためだ」


「はぁ? なっ、なにを言ってるんだ。わらわがいつここから出たいなんて言った」


 言わなくてもそれくらい分かる。

 それだけの時間を共にしてきたつもりだ。

 そしてそれを素直に口に出せない事も。


「言ってないな。だから、これは俺自身の目標だ、俺がネロと外に出て、一緒に過ごしてみたいだけだ。想像してみろ、二人で実力を隠して冒険者として旅をしたり、きっと面白いぞ」


「うぐっ、確かに隠れんぼよりは楽しそうだな。だがわらわは……」


 戸惑いを見せるネロ。過去の経緯を聞いていたので理由も想像が付く。

 彼女は世界から拒絶される形でここに封印されたのだから。

 けれどそんな過去など俺の知ったことではない。


「さっきも言ったが、ネロの意見など聞いていない、俺がしたいことをするだけだ」

 

 長い年月を経ても結局俺の本質は変わらなかった。

 俺は誰かの為にしか動けないそういう歪な人間なのだ。だからこらからはネロのために動く、彼女をこの監獄から解き放つために。

 それは誰に何と言われようが俺の意思に間違いない。


「……ふん。なら好きにしろ。わらわは期待などしてやらぬからな」


「ああ、期待ぜずに待っていろ」


 俺はそう言ってネロに笑いかけると常世から現世に向けて飛び出した。





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読んで頂きありがとうございます。

評価をしていただいた方には感謝を。


続きを書くモチベーションにも繋がりますので

面白いと思っていたけたらた


☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。


もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。

 



 

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