第74話
ラー・カイラルの話によると。
その名も無き大いなる存在が遺した秘宝とも、その大いなる存在が転身した姿そのものとも云われており。
その力は他の神々をひれ伏せさせ、従わせる力があると。
つまりこの冠を手に入れた者は神々の王になれるという事らしい。
正直に云えば。
「その話どこまで本当なんだ?」
「我の話を疑うと?」
「本当にそんな物騒な品物で、他の神々に手渡したくないのなら、あんたじゃなく、ラー・ブレスカ自身が守るべきだろう」
「つまり、我では荷が重いと?」
侮られたのが癇に障ったのか、ラー・カイラルから敵意を向けられる。
「ハッキリ言えばそういうことなんだが、もっと単純な事だ。なぜお前自身がその神冠をその頭上に戴かない。こんなところで悪魔どもの見張りをさせられている意味はなんだ?」
「なるほど。確かに汝の言葉も分かる。しかし神が誰しも人間のように野心にあふれているとでも思ったか小童、そのような低次の視点で物を語るな」
「確かに失礼な事を言った。その点は詫びよう。だが最初に言った点はどうだ? あなたくらいならば分かるだろう。俺と戦えばどうなるのか」
ラー・カイラルも確かに神竜と言っていいほどの神気を纏ってはいる。
しかし、力の差でいえば俺は間違いなく勝つ。
これは自惚れではなく歴然とした力の差。
ハッキリ言えば神の中でもラー・カイラルは強い方ではない、ならなぜそんな彼がそんな力を秘めた秘宝を守るのか?
そしてもっと言うなら他の神がなぜこれまでこの力ある神器を放置し続けたのか?
「…………」
ラー・カイラルは答えない。いや答えられないのかもしれない。
なら俺は考えついた推論を述べた。
「ラー・カイラルよもしかして
俺の言葉にラー・カイラルは動揺することなく静かに目を閉じた。
「……汝の言うとおりだ。しかしほとんど力を失ったとはいえ、神冠は人の世には過ぎたる代物。それを人が手に入れれば世界を統べることも難しくなかろう」
「つまり、神々にとっては過去の遺物であっても、人間の権力者からすれば喉から手が出るほど欲しい代物ということだな」
つまり、そう考えるとネルソンは世界を統べる王にでもなりたかったのだろうか?
どうにも違和感がある。
「それで全てを分かった上でなお神冠を欲するか? 荒ぶる風の神よ」
「うーん。それなんだが借りる事は出来るか? もちろん要件が済めば返しにくるぞ」
俺が出した思いがけない提案にさすがのラー・カイラルも驚きを隠せず大きな目を丸くしていた。
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