第81話 ネルソン視点

 ついに封印から解かれ目覚めた破壊の女神。


 その姿は祭壇でみた恐ろしい姿とはまるで違っていた。


 長く美しい銀髪で褐色の肌。

 妖艶で豊満な肉体。

 何より、普通のエルフより長く伸びた切れ長の耳は失われしハイ・エルフの一族の特徴と一致した。


 中でもハイ・エルフで褐色の肌といえばパルネフの一族。

 エルフ族からダークエルフと恐れられ畏怖された存在で多くのエルフの氏族がその傘下に入っていたと言われている。


 まさかカーリーン神の正体がハイ・エルフだったとは、調べていた時にそんな予感もしていたが、これは私にとっては好都合。

 失われたハイ・エルフの血が手に入るのだから。


 私は咄嗟に膝を付き臣下の礼を取る。

 ゲイルを敵対者として進言するために。


 ところが目を覚ましたカーリーン神は、ひとつ大きな欠伸をした後、ゲイルを見定めるなり、有無を言わさずヤツに突進していった。


 どうやら己と敵対する者だという事を、私が言うまでもなく感知したのだろう。

 流石は神の座まで上り詰めた者だ。


 ところが、カーリーン神はヤツを襲うどころかベタベタとくっつき始めた。


 わからん。どう言う事だ?

 私が戸惑っていると、ゲイルとカーリーン神が私の事などそっちのけで、お互いを知っているかのように話し始めた。


「ほれほれ、どうだゲイル、現世でのわらわの肉体は、惚れ直したであろう」


「いやまあ確かに目のやり場に困るが……ネロ。なんだか常世に比べて体型違わなくないか? ほら、あの時はもっとあどけなさを残した美少女といった感じで、胸だってもっと慎ましかっただろう」


「あれは精神体だからな。精神まで老け込みたくはないだろう、だから気持ちは常に十代って、なに笑ってるゲイル」


「くっくっ……って、いやいや、笑ってないから。気持ちは十代、うん悪くないと思うぞ、実際に俺たちにもう肉体的な年齢は関係ないからな」


「まあ確かに年齢は関係ないが、でも……長かった、長かったんだぞ、ゲイルが出ていってから、ずっと待ってたんだからな」


「ああ済まない遅くなった。それからただいまネロ。ずっと会いたかったぞ」


「うっ、ぐすん。わらわも、わらわの方がずっと会いたかったんだからな。でも約束通り現世に呼び戻してくれてありがとうゲイル。信じてたぞ」


 破壊の女神ともあろうものが瞳を潤ませながら、こともあろうに敵対者であるはずのゲイルに自ら口づけをした。


『はあぁぁあ?』


 私は一体何を見せられてるのだ。

 理解不能。目の前の出来事が意味不明だ。


 いったいなぜ?

 頭の中で想定される状況が思い巡る。


「……そうか、そうか、そうか、騙したなゲイルぅぅぅう」


 私は怒りと共にゲイルの名を叫んだ。




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