第80話

 儀式が坦々と進む中、俺はネルソンの動向を注視していた。


 儀式を開始する合図のように嵌め込まれた不懐の石盤に手をかざし、魔力を流し込む。

 神壇がそれに合わせて淡い光を放つと、呼応するようその上に置かれた聖魔櫃も輝き始める。

 さらにネルソンが神珠へと手を伸ばし、両手を添えると、聞いたことのない発音の呪文を発した。


 神珠はその言葉に合わせ、台座から浮かび上がると聖魔櫃の真上へと浮遊しながら移動する。


 丁度縦一列に不懐の石盤、神壇、聖魔櫃、神珠が並ぶ形になり、全てが光の人で繋がっていた。


「良いかゲイル。これがカーリーン神復活の時だ」


 ネルソンはそう言うと、渡していた冠を自らの頭に載せる。両手はそのまま天を仰ぐように高く伸ばされ、長い祝詞が始まった。


 そして長い祝詞を唱え終わった時。それぞれを繋ぐ光も輝きが直視出来ないほど強くなる。


 ネルソンはそのタイミングで不懐の石盤に手を向けると、突然雷撃の魔術を展開し石盤に攻撃をした。


 思わず剣を取っ手反応しそうになる。

 しかし、よく見ると壊れる事が無いと言われていた不懐の石盤がボロボロに砕けていた。


「よし、これで結界は解かれた。後は」


 ネルソンは更に違う祝詞を唱え始める。


 今度は開くことの無かった聖魔櫃の蓋が勝手にズレ落ちると、そこに神珠がゆっくりと吸い込まれていく。

 ネルソンは再び天を仰ぎ強い力を秘めた言霊を発する。


 すると聖魔櫃の中から光の柱が立ち昇り、天を貫くと光は収束して消えた。

 そこに光の柱が貫いた天に続く穴を通って月の光が神壇へと降り注ぐ。


「よし、上手く言ったようだな」


 ネルソンのその言葉通り。

 聖魔櫃から上半身だけ身を起こした女。

 それは間違いなく。


「ネロ」


 俺は思わず大声を上げて呼びかける。

 ネロは眠たそうな顔で俺の方に振り向くと。


「ふぅわぁさあぁぁあ」


 と、大きな欠伸をひとつした。



――――――――――――――――――――


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続きを書くモチベーションにも繋がりますので

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