第5話

 俺がノートンの元に来てから五年。


 ノートンが逝った。


 最後に「クラリスを頼む」と父親としての言葉を遺して。


 剣の師としてはノートンとは意見を違えて諍うことが多かったクラリスだが、父親としての死は堪えたようで初めてクラリスが泣いている姿を見た。


 慰めの言葉が見つからず、昔妹だった女にしていたようにただ抱きしめて泣き止むまで側に居てやった。


 しばらくして立ち直ったクラリスは俺に提案をしてきた。


 迷宮都市『リンガミル』に行こうと。


 俺は初耳だったが冒険者の間では有名な話らしく、神竜ラー・ブレスカによって作り出された四つの迷宮を攻略するための拠点都市らしい。


 いまだその四つの迷宮を攻略すれば、最下層には人類種を救う秘宝があるだとか、世界を統べる事の出来る伝説の剣があるとか、与太話の類が横行している。

 ただ迷宮から産出される財宝は現実にあるらしく失われて久しい魔道具や、人が作ったとは思えない武具も見つかり、高値で取引されている。

 こうした一攫千金を夢見て冒険者達が集まり世界最大の冒険者ギルドも存在する冒険者達の街。


 それがクラリスの目指す場所。


 特に目的の無い俺はクラリスに意見に同意し、リンガミルへ向かうことになった。



 


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