第32話

 ようやく地上にたどり着いたのは三日後だった。


 ネロの加護が届かないので、普通に腹も減る。

 戻ってきて早々に餓死なんて洒落にならない。


 俺は急いで街に戻る。リンガミルは昔と変わらない様子で賑わっていた。


 食事前に少し情報を集めると、どうやら俺が常世に行ってから三年の月日が経っているらしい。


 ネロからはそういう事もあり得ると聞かされていたが驚いた。


 俺の感覚では少なくとも百年単位で年を重ねていたつもりだったからだ。


 最悪、リンガミルの街が様変わりしている可能性も想定していた。


 思った以上に年月が経っていないので、俺が生きていると知られると面倒くさそうだなと考えた。


 しかし俺はネロの眷属になった事もあり、主であるネロの影響を強く受け姿が変化している。顔立ちは変わらないが、まず髪の色が灰色に変わり伸び放題。肌も褐色になり、虹彩も金色に変わっている。

 恐らく、知り合いに俺がゲイルと言っても誰も信じないだろう。


 つまり、問題なしとの結論に達した。


 どうせ、街中は隠密で行動するし、顔を合わせるのは取引する商人くらいなものだろう。


 そう判断して俺は手に入れた迷宮の素材を売りに行き、その日の食料と宿を確保した。

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