第40話 再会②
「それにしても、よく俺だとわかったな」
髪の色やら何やら変わっているし、何より別れてから、こっちの時間では十年くらいは経っているはずだ。
ひと目で俺だと見抜いたのには驚いた。
「ぐすっ。私が兄さんを間違えるはずありません」
どんな根拠か分からないがニーナはそう断言する。
「そうか、まあなんだ。元気そうで良かった」
「兄さんこそ、心配してました。噂を聞いて死んだのかもと……ずっと、会って謝りたかったから」
ニーナは泣きながら床に頭を付けて言葉通り謝罪を始める。
何度も、何度も「ごめんなさい」と。
「頭を上げろニーナ。別にお前のことを恨んじゃいないよ……許すも何も俺達が生きてここに居る。お互い苦しいこともあっただろうがまた会えた。それが答えだろう」
もしあの時、ニーナが付いてきてくれたら、確かにその場は満たされたかもしれない。でも、力の無い俺ではニーナを守りきれたかは分からない。いや、恐らく守りきれず最悪二人共に死んでいた可能性の方が高い。現に俺は行倒れてノートンに救ってもらった身だ。
つまり、結果論だがあの時はあれで良かったのだろう。いまこうして生きて会えたのが何よりの証だ。
「兄さん。ごめんなさい……それから、ありがとう。貴方のお陰でここまで生きてこられた。貴方に謝ってお礼を言いたい。それだけのために頑張れたから。体は生きるためにすっかり汚れきったけど、その気持ちだけは本物だから。言葉だけでも許してくれて、生きててくれて、私に感謝の気持ちを伝えさせてくれて、兄さん……本当にありがとうございます」
ニーナは泣きながらまた頭を床につけた。
「ありがとうニーナ。兄らしいことなんてろくにしてやれなかった俺に、その言葉は不相応だけど、ありがたく頂くよ」
言葉通り俺はニーナを救ってなんていない。でもここで受け入れなければきっと彼女は先に進めない。いつまでも俺に対する罪悪感を背負い続けるのだろう。
ならその呪縛から彼女を解放してやるのは兄として最後の役割。
「兄さん、本当に許してくれるの?」
「ああ、許すよ。だからこれからは自分のために頑張って幸せになる努力をしてくれ、これが兄としての最後の願いだ」
「……そう、やっぱり一緒にはいられないのね……分かったわ兄さん。兄さんのお願いだもの頑張ってみる。自分のために。だから兄さんも幸せになってくださいね」
「ああ、ありがとうニーナ。元気でな」
最後はぎこちなくなってしまったが笑顔で別れを告げ、俺はその場から去った。
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