第39話 再会①

 剣神祭の前夜祭。


 俺は思わぬ人物と遭遇した。


 普段は気配を殺しなるべく人目を避けているのだが、飯を食うときだけは別だ。

 いつも味気ない食事ではつまらない。

 だから、こうして美味そうな露天が並ぶ時にはなるべく食を楽しむことにしていた。


 そんなささやかな俺の楽しみを満喫している最中その女は話しかけてきた。


 涙ながらに「ごめんなさい」と言って。


 ずいぶんと雰囲気は変わっていたがすぐにニーナだと分かった。

 どことなく昔の面影が残っている。

 懐かしい思い出と、忘れていた苦々しい記憶が蘇る。

 しかし感情は動かない。


 俺の中でニーナの事はちゃんと過去として整理がつけられていたようだ。


「久しぶりだな。ニーナ」


 だから特に何も思うこと無く話すことも出来た。


「はい、兄さんこそ。本当に、本当に良かった。死んだかと思って……」


 なんだか人目もはばからず泣きそうな勢いのニーナに慌てる。

 ここで泣かれたら俺が何かしたように思われかねない。


 俺はいったんその場を離れ、落ち着いた場所でニーナと話すことにした。


 


――――――――――――――――――――


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