第96話
アヴェルの残骸との決着を付け。
ネロとミナの二人に目を向ける。
向こうもこちらを見ていたようで、俺の勝利にミナが笑いながら手を叩く。
そこにネロが飛び込み一撃を加える。
しかし攻撃を予測していたミナに躱され、置き土産で爆雷をもらう。
ネロ自身のダメージはたいしたことないようだが、動きが直線すぎて見え見えだ。
もしかしたら予想以上に怒りで我を失っているのかもしれない。
そう思える動きだった。
まるで良いようにミナに翻弄させるネロ。
悔しかった。
あんなに俺を圧倒していた存在が遊ばれている。
思わず弓を引きそうになる。
だがネロはそれを望まない事は理解していた。
俺にも言っていたからだ。
禍根は自らの手で絶つべきだと。
それでもネロらしくない歯痒い戦いを見せつけられ、俺の不機嫌さは最高潮に達する。
思わず我慢できなくなり大声で激励を飛ばす。
「いつまで遊びに付き合っている。それでも破壊の権現なのか。そんなお前の下位互換の神などに遅れを取るなんて俺が許さんぞ」
その言葉はネロだけでなくミナにも伝わったようで。
「たかだか暴風の神が言ってくれるじゃない。それならその身にアナタが下位だという神の力を受けなさい」
ミナは瘴気を右手に集めるとそれを俺に向かって放つ。
「不味い。ゲイルそれに触れるな」
ネロからすぐさま危険を知らされるが、ネロの目を見返し伝える『心配するな』と。
その伝えた思い通り、俺は嵐の結界でミナの瘴気を打ち消してみせる。
ミナがそれを見て一瞬驚く。
どうやら俺を侮っていたようだ。
そしてその一瞬の隙をネロが見逃すはず無かった。
渾身の一撃がミナの顔をとらえ殴り飛ばす。
それと同時に崩壊して行くミナ。
「あら、残念。本物はこっちよ」
だが全く同じ姿をしたミナが瞬間移動したように崩れ落ちたミナと反対側に姿を現す。
「ふっふっ。そろそろ神力を解放しっぱなしで疲れてきたんじゃない。特に頭上のヘイローいい感じで輝きが増してきたじゃない」
ミナに言われて気付く、ネルソンの時に頭に掲げた光の輪環の輝きが強くなっていることに。
「そう。これもお前の狙いなのだな」
「あはっ、分かっちゃった。本当はどうやって貴方にそれを頭に載せてもらおうか考えていたけど、来たときには貴方もうヘイローを戴冠してるんだもの驚いたわよ。もしかしたらアホなネルソンが上手くやってくれたのかしら」
「いいや、これはわらわが自ら頭上に掲げた。本来わらわが引き継ぐべき物だからな」
「ええ、その通りよ。だからこそそのヘイローはアナタに相応しく輝こうとして、アナタ自身から力を奪う」
どうやらネロの頭上で輝く光輪には、ラー・カイラルから教えてもらった事以外にも何かあるようだ。
「つまり。お前は逃げ回っていればいずれわらわが自滅するのだと踏んだのだろう。だが甘いな」
ネロはそう言って不敵に笑うと、常世で見せた力とは比較にならない神力を解放した。
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