第12話 理性というのは気を抜いたら一瞬できかなくなる
「かーえーろ! 廉くん♡」
「えっ! まぁ、いいですけど…」
朝から夕方までずっと高浜さんに喋りかけられ、その相手をするのにとても体力を使った。
僕の疲労はMAXなのだが、高浜さんはこんなに喋って疲れないのだろうか?
「それでね、それでね。私、今日、廉くんの家に泊まるから!」
「はい?」
「それでね、私はいちごパフェが好きなんだけど、廉くんはどんなスイーツが好き?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「僕の家に泊まる!? しかもき、今日?」
「………それで廉くんはどんなスイーツが好き?」
「はぐらかさないでくださいよ! というか、男子の家に泊まるってどれだけ危険なことかわかってるんですか?」
「えっ? 廉くん以外の男の子の家に泊まるわけじゃないじゃん」
「っ! だから良いわけじゃなくて、僕が何かするかもしれないじゃないですか!」
僕だって高校生、思春期真っ盛りだ。家に自分と2人きりだなんて、理性が保てるかどうか怪しすぎる。
「えっ? 別にいいよ、むしろウェルカムって感じ♡」
「ウェルカムじゃないんですよ! そういうところはしっかりしてもらわないと…」
「大丈夫、大丈夫、廉くんは何もしないって信じてるから♡」
「高浜さんの家は大丈夫なんですか?」
「うん! 大丈夫だよ! 友達の家に泊まるって言ったら、許可してくれたよ♡」
「………そうですか」
「もし、廉くんに断られたら、私、今日どこで過ごせばいいの?」
「………今日だけですよ」
「やったー、廉くん、ありがとう♡」
今、家には一つしか布団がない、これを高浜さんに使わせるとして、今日は何も使わないで寝るしかないか…
「あのさー、廉くん」
「どうかしましたか?」
「いつまで私のこと、高浜さんって呼ぶの?」
「え? じ、じゃあ何て呼べば…」
「私のことはね。こーちゃんって呼んで♡」
「こ、こーちゃん…」
「そう! こーちゃん! 呼んでくれる?」
こーちゃん、こーちゃん、こーちゃん? 普通に高浜さんじゃダメなのだろうか。
そんなふうに考えていると…
「で! こーちゃんって呼んでくれるの?」
「こ、こー、琥珀さん」
僕にはそこまでが限界だった。
「なんで琥珀さんなの!? こーちゃんって呼んでよぉ〜」
「む、無理です。今の僕にはできません」
「ふ〜ん、今はできないんだ。じゃあいつか言ってもらうからね♡」
結局、高は…琥珀さんは僕の家に着くまでずっと僕に喋りかけていた。
こーちゃんなんて絶対言えない。
*
家に着き、鍵を開けようとするが…
「あれ? 空いてる?」
なぜか家の鍵が空いていた。………そういえば、朝、急に高浜さんが来たから、鍵閉めたっけ? でも、真珠とりん先輩がいたけど鍵は渡してないし…
「えっ! 大丈夫!? と、とりあえず中に入って何か盗まれてないか確認しないと!」
急いでドアを開け、何か部屋が荒らされてないか確認し…
「えっ!?」
簡潔に言います。部屋は荒らされてました。空き巣でも何かが暴れたわけでもなく、ただ1人の女性、遠野真珠によって…
「………真珠、色々と聞きたいことがあるけど、何をしてるの?」
「見ての通り料理をしてるのよ、あなた」
「どうして?」
「そりゃあ、あなたが帰ってくるんだもの、晩御飯は準備しとかないと」
「それで、真珠はどうして僕の家にいるの?」
「それはあなたが不用心なことに鍵を閉めていかないから、私は鍵を持ってないし、閉めることもできないから一日中あなたの家にいて、掃除やら洗濯などをやったわ」
「一日中…真珠! 学校は!?」
「もちろん休んだわ、もし学校へ行ってあなたの家が空き巣にでも入られたら、私がそいつを生まれたことを後悔させるぐらいの罰を与えないといけなくなるからね。けど、無駄な犠牲は増やしたくないのよ。だから一日中あなたの家にいたのよ」
「………それでやってくれたのはありがたいんだけど、洗濯やら掃除などをやって、どうして朝よりも部屋が荒れているんだ?」
「………それは私にも分からないわ。………そうね、強いていえば気づいたらこうなってた感じかしら?」
「安心して、廉くん。私、掃除得意だから♡」
今、この状況に安心できていないのだが、片付けは後でやれば良いのだが、問題は琥珀さんが僕の家に泊まるかだ。最悪、申し訳ないが、真珠の家に泊めさせてもらうのが一番の得策なのだが、それは真珠に聞いてみないと分からない。
「それで、どうして高浜さんがここにいるの?」
「えっと…その…」
「私、今日、ここに泊めてもらうんだ」
「は?」
空気が凍りついたとはこの事かと思った。そのくらい一瞬で寒くなった。
「あなたどういう事? どうして高浜さんがあなたの家に泊まるのよ」
「それは…僕にも…」
「そ、それでさ、真珠、もし良ければ高浜さんを真珠n」
「しょうがないわ、私も今日、ここに泊まるわ」
「は!? な、何を言って!」
「それでなきゃずるいわ。高浜さんだけ」
「そ、そういう問題じゃ!」
「あら、じゃあ、高浜さんは良いのかしら?」
「……………」
「無言は了承とみなすわ。良いわね」
「………はい」
ん? 待てよ、自分で言うのも何だが、2人とも僕に異常なほど惚れている。
これ、襲われるのは僕の方じゃないか?
この瞬間、滝山廉は自分の身を守るために今日は寝れないことが確定した。
しかし、何と言っても布団が足りない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます