第37話 昔話
「……それで、滝山くんの昔の事もっと知りたいです」
「いいわよ。じゃあ、どこから話しましょうかね。いつぐらいが良いとかある?」
「……生まれた時からで、お願いします」
私たちは滝山くんを見送った後、リビングにあるテーブルに座り、彼の昔話を聞くことになった。
「生まれた時からね。いいわよ」
彼のお母様はアルバムを持ってきて、私に見せてくれた。
「これが、廉の…生まれて1日も経ってないくらいだったかな?」
それは滝山くんが病院のベットでお母様に抱き抱えられてる写真だった。
「……可愛いですね」
「そう、すっごく可愛かったのよ〜。廉が生まれてから、『あぁ、また私の大切な宝物が増えたんだな〜』って思ったものよ」
「そうなんですね」
「でもね、1つ悲しかったのは、初めて廉が喋った時に聞けなかったのが、残念だったな〜」
「というと?」
「お兄ちゃんはお母さんが私を産むために入院しているときに喋ったのです」
「そう、だから聞けなかったのよ〜」
「お父さんが家でお兄ちゃんと2人きりの時、突然、『ママ』と喋ったんですよね?」
「そう、廉が『ママ』って言ったの本当に聞きたかった〜」
そういうお母様は本当に悔しそうだ。
「でも、菫も元気に生まれてきてくれたし、良かったよ」
「ちなみにですが、リシアさん。お兄ちゃんが初めて喋ったのは生まれてから、11ヶ月と3日後です。そして1人で立って歩いたのは9ヶ月と26日後です」
「そうなんですね。知りませんでした」
菫さんは私の知らない滝山くんを知っている。もっと、もっと知りたい!もっと滝山くんのことを私に教えて! 生まれた時から今までの1年…いや、1ヶ月おきの好きな食べ物だったり、嫌いな食べ物。よく遊んでいたオモチャとかあったらぜひ欲しい! 望みは薄いけど滝山くんのヨダレのシミとかが残ってるかもしれないし…
「リシアちゃん? 大丈夫?」
「……あっ、はい、大丈夫です。すみません」
「体調悪かったりしたら言ってね? 何かあってからじゃ遅いんだから」
「はい、分かりました」
「そ〜れ〜で〜リシアちゃんはどうなの〜?」
「な、何がですか?」
「廉よ! 廉! 廉のことよ! あの子がこんなに可愛い子を連れてくるなんて初めてなのよ。そりゃあ、母親として気になることだよ〜」
「はい、私も気になります。リシアさんのことを。お兄ちゃんとどういう関係なのか。どこまでヤったのか。返答によっては私がこの家から追い出します」
「菫!? な、何言ってるの?」
「私は本気です。リシアさんがお兄ちゃんに相応しいかを見極めるのです。お兄ちゃんには…幸せになって欲しいから…」
「受けて立ちます。菫さん」
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