第61話 海の家でのバイト⑩
第60話を9月28日に加筆・修正しました。
読んでいない方はもう一度読んでみてから第61話を読んでください。
「リシアさん、遅い!」
「……すみません、昔から長くお風呂に入るのが好きでして」
「それにしても遅すぎないのかしら? あなたがお風呂に入ってから、もう2時間も経ってるのよ?」
「そ、そんなに長かったでしょうか? これでも短くした方なのですが…」
私はこの会話の内容がほとんど信じることができなかった。
「あなた、お風呂にスマホとか持っていっていないわよね?」
「はい、そこのテーブルの上にありますし」
スマホをお風呂に持っていっていないのも、不思議に思っている点だ。
リシアさんが普段2時間以上お風呂に入っている事を信じたとしても、お風呂にスマホも何も持って行かずに、ただ2時間以上湯船に浸かっていられるのだろうか?
私はせっかちなのもあるが、私だったら絶対に無理だ。
「真珠ちゃん、お風呂入り終わった?」
部屋から出てきた瑠璃さんにそう聞かれるが、
「ごめんなさいね、まだ入っていないのよ」
「えぇ! まだ入ってないの!? もう廉くんが入り終わってから2時間も経ってるよ!?」
「とりあえず、先にお風呂に入ってはどうでしょうか? 後でいくらでも不満は聞くので…」
「そ、そうね。とりあえず、入ってくるわ」
これ以上、長く話をしていると、この後に入る人達にも迷惑になってしまうので、私はお風呂に入ることにした。
お風呂場に入った瞬間、私はなぜ、リシアさんが2時間も長風呂をしていた理由を理解した。
「リシアさん! あなた…やったわね…」
「わっ! ふ、服着てくださいよ! ……それで何のことですか?」
まだシラを切るつもりなのだろうか、けど、私は気づいてしまったのだ。
「あなた、お風呂のお湯、もう一回いれたわよね?」
「はい…いれましたけど…長い時間入っていてお湯が冷めちゃったので、次に入る真珠さんに悪いと思って、一回お風呂のお湯を全部流して、新しく沸かしましたよ?」
「そうよね、やっぱり、彼の次にお風呂に入りたかったわ」
「真珠さん、何か問題でも?」
「問題よ、大問題よ。というか…あなた、分かっててやってるわよね?」
「本当に何のことでしょうか?」
「もういいわ、私が言う。あなたは彼が入った残り湯を自分だけで独り占めして私たちに堪能させないように、わざと長い時間、お風呂に入っていたわよね?」
「………」
「リシアさん、何か言いなさいよ」
「………バレてしまいましたか、でも、もう遅いです。廉くんの残り湯は私がたっぷりと堪能させてもらいましたから。諦めてお風呂に入ってきたらどうでしょうか? もう、残り湯はありませんけど」
「やっぱり…そうだったのね」
「し、真珠!? どうして、服着てないの!?」
何か飲み物でも飲みたかったのだろうか? 彼が部屋から出て来たと思ったら、すぐに部屋に入ってしまった。
かと思ったら、部屋から声が聞こえて来た。
「リ、リシアさん、お風呂沸いてましたか?」
「はい、きちんと沸いてましたよ。でも、どうしてそんな事を聞くのですか?」
「いや、この後にみんなが入るお風呂に僕が入るのはちょっと…って思って、今日はシャワーしか浴びてないから、お風呂が沸いていたかどうか確かめてなかったんだよね」
「あなた、それは本当なの?」
「……そ、それ、ほ、本当ですか?」
「ん? 本当だよ、嘘なんかついてないけど?」
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