第62話 夜這い

現在時刻は午前2時、世間一般には丑三つ時と呼ばれ、一番幽霊が出やすい時間だとも言われている。


『夜、一人は怖いから、もしかしたら、廉くんの部屋にお邪魔しちゃうかも』


なんてことを日中に廉くんに言ったが、

実際、その時間になってみると思っていたよりも怖く、この際、誰の部屋でもいいのだが、本当に廉くんの部屋にお邪魔しようかと本気で考えていた。

部屋から顔だけを出し、廊下を覗く、もちろん電気はついておらず、真っ暗だ。

この時点ですでにほぼ限界なのだが、勇気を振り絞り、廊下に出る。

廊下の電気をつけるために、キッチンの方に移動し、廊下の電気をつける。

一番前の部屋の静かにドアを開ける。

そして、私は廉くんの部屋に入っていった。




***




なぜか目が覚めてしまい、今は何時かとスマホを開く、ブルーライトの光が目が覚めたばっかりの僕には刺激が強かった。現在時刻は午前三時、起きるのにはだいぶ早い時間だ。


「のどが渇いたな…」


キッチンに行って水でも飲もうかと思い、布団から出て立ち上がろうとした時、何かが手にぶつかった。

ぶつかったのは、スマホとかではなく、熱を持っていた。

それは紛れもなく、人の手だった。


「えっ!?」


自分が泊っている部屋に自分以外の手があるというのはどう考えてもおかしい。


「リ、リシア…さん…?」


さっきまでは暗くて誰の手なのか分からなかったが、暗闇に目が慣れてきたおかげで、リシアさんの長い白髪に気づくことができ、誰の手なのか気づくことができた。

そして、自分の失態にも気づいた。

さっきも言った通り、今は午前三時、何らかの理由で僕の部屋で寝ているとしても、この時間に起こすのはどうなんだろうかと思い、さっき少し大きな声を出したことを反省した。


「本気に思っていなかったのだが、部屋に来るかも? と言ったのは琥珀さんだったはずじゃ……」


「じゃあ、どうしてリシアさんが僕の部屋にいるんだ?」

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