第58話 海の家でのバイト⑦

「気持ちはありがたいですけど、買い出しに6人もいりませんから!」


「遠慮しなくていいのよ。それに荷物持ちも必要でしょ?」


「別に遠慮してるわけじゃないんだけど……、そういえば、瑠璃さん、海に入るんじゃなかったんですか?」


「別に海に入らなくても大丈夫だよ。この1週間時間は腐るほどあるしね。けど、廉くんと買い出しに行けるのは、今だけしかないかもしれないからね♡」


「そ、そうですか…、りん先輩、どうしますか?」


このままでは埒が明かないなと思い、りん先輩の判断に任せることにした。


「さっき、真珠さんが言った通り、人は別に多くても困ることはないから、全員で行っても良いんじゃない?」


この一言で買い出しには全員で行くことが決定した。




***




歩くこと10分弱、ようやくログハウスから一番近いスーパーに着いた。


「いや~、遠かったね~、もう足が棒になりそうだよ~」


「琥珀さん、それは大袈裟すぎよ、でも…確かに遠かったわね…」


ログハウスから徒歩で10分弱と意外とかかり、僕たちがスーパーに着く頃には全員がすでに疲れていた。


「本当に全員で来て良かったよね」


りん先輩が息を切らしながら言う。


「3人だけだったら、ログハウスに着く頃には、料理作る気力なんて、きっと残ってなかったね」


「そう…ですね…」


「それじゃあとりあえず、スーパーに入って、買い出ししようか」




***



「涼しいー!」


スーパーの中に入ると、当たり前だが、冷房がしっかりと効いており、とても涼しかった。


「涼しいですね、滝山君」


「そうですね、リシアさん。外と比べると、とても涼しいですね」


「それじゃあ、今日の晩御飯と明日の朝ご飯の食材を買うつもりだけど、皆さん、何か食べたいものはありますか?」


「海の近くだから、お刺身!」


「私もお刺身が食べたいわ」


「私も!」


「私も食べたいです」


「お刺身だったら、私も楽だし、廉くん、お刺身でもいい?」


「はい、僕もお刺身食べたいですし、いいですよ」


「分かった。それじゃあ、鮮魚コーナーへ行こうか」




***



「わぁ! お魚さんがいっぱい!」


「当たり前でしょ、琥珀さん。ここは鮮魚コーナーなんだし、でも…ほとんど、切り身の状態なのだけれど、魚がいっぱいと言っていいのかしら」


鮮魚コーナーには海を泳いでいた姿のままの魚もあるが、ほとんどは切り身の状態になっている。


「皆さんは何か食べたいお魚はありますか?」


「私はサーモンが食べたいわね」


「私、いか!」


「私もサーモンが…」


リシアさんがそう言うと、突然真珠が、


「やっぱりサーモンは辞めるわ。……そうね、カツオがいいわね」


「真珠……」


まだリシアさんを信用していないのかと呆れたように言う。


「何よ。急にサーモンが食べたくなくなっただけなのよ」


「まぁ、いいけどさ…」


「それで…瑠璃さんはどうしますか……瑠璃さん?」


「あれ? 瑠璃さんは?」


さっきまで一緒にいたはずの瑠璃さんが姿を消していた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る