第59話 海の家でのバイト⑧
「瑠璃さんは…どこへ行ってしまったのでしょうか?」
「スーパーで迷子になるなんてあるのかしら?」
「私あるよ!」
「琥珀さん、スーパーで迷子になることなんてあるんですか?」
「迷子になったことがあるって言っても、3、4才ぐらいの時だったんだけどね。ママから勝手に離れて1人でお菓子コーナーに行ったら、ママがどこにいるか分かんなくなっちゃったんだよね」
「でも…瑠璃さんは高校生ですし…流石にお菓子コーナーにいるなんてのは…」
「でも、物は試しよ。1回見に行く価値はあるんじゃないかしら?」
瑠璃さんを探すためにお菓子コーナーに向かった。
***
「スーパーという所にあんまり来たことがないのだけれど、お菓子も充実しているのね」
「そうなんですよ、真珠さん。今はスーパーでもいろんなお菓子が売ってるんです」
「この箱は何かしら?」
真珠がそう言って手に取ったのは、いわゆる知育菓子というものでお寿司が作れるキットだった。
「お寿司…かしら? これは何の箱なのかしら?」
「それはですね、真珠さん。知育菓子というもので、箱の中には、プラスチックで出来たキットが入っていて、それに、付属している粉と水で説明書通りに作ると、それだったら、お寿司の形をした甘いお菓子ができるんですよ」
「へぇ、最近のお菓子はすごいわね」
「……ところで、瑠璃さんはいませんでしたけど…」
「私としたことが、すっかりお菓子に夢中になって、本来の目的を忘れていたわ。ごめんなさいね、瑠璃さん」
この場にいない瑠璃さんに真珠が謝る。
「お菓子コーナーにはいませんでしたけど、一体どこにいるんでしょうか?」
「誰か瑠璃さんの連絡先知ってる人いないの?」
僕は瑠璃さんの連絡先を知らないので、手を組んでいるみんななら知ってると思い、4人に聞く。
「私が電話をかけるわ」
「ありがとう、真珠」
真珠がスマホを操作し、瑠璃さんに電話をかける。
「………出ないわね、一体どうしたのかしら?」
瑠璃さんに何かあったのかもしれないという不安が頭をよぎる。
しかし、その不安は良い意味で裏切られる。
「あっ! やっと見つけた〜、探したんだよ〜」
瑠璃さんが何事もなかったかのように戻ってきた。
「る、瑠璃さん…何をしてたの?」
「私? 暑くて暑くてしょうがないから、アイス見てた」
「はぁ、あなた、琥珀さんの3、4歳の頃とほとんど同レベルよ」
「えっ! どうしてそんなこと言うんですか!? 真珠さん!」
「何も言わないで、どこかに行ってしまうと、私たちが困るのよ……」
「あっ、ごめん…そういうのは考えてなかった」
「それで…その手に持ってるものは何?」
「これ? これは……アイス……」
「あなた、分かってるの? 1日に1人300円ぐらいしか使えないのよ」
「大丈夫だって~、このアイスは自分のお金で買うからさ」
「「「「「………………」」」」」
「ん? みんな、どうしたの?」
「恥ずかしいけれど、3万円にとらわれすぎていたわ。そうよね、別に自腹でもいいのよね」
瑠璃さん以外は気づいていなかったのだろう、だからこそ、瑠璃さんが自分のお金を使うと言ったときに瑠璃さん以外が黙ってしまったのだろう。
ちなみに、瑠璃さんが持ってきたアイスは、〇ーリッシュという少し溶かして、チューチュー吸って飲むととても美味しいアイスでした。
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